オオカミのとおぼえブログ

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樋口・宇野・羽生のインタビューから見るアスリートの強さ

 

自分に素直な人間は強い。なぜなら、常に己と向き合っているから。

 

自分をさらけ出せる人間はもっと強い。なぜなら、ほとんどの人間は臆病で、そんな勇気がないからだ。

 

そんな中で、堂々と自分の意見を発信しているアスリートたちがいる。彼らの特徴は決まって強く、賢い。そして圧倒的な計画性と冷静な分析力で結果を残しているのだ。これは世界のトップアスリートにおける共通点といっても過言ではないだろう。

 

時には、その強さを「ビックマウス」と批判されることがあっても、決して彼らが動じることはない。むしろ有言実行は彼らの信念で、あえて厳しい言葉で自身を追い込んでいるくらいだ。

 

【テーマ】

 

樋口新葉の場合

sports.yahoo.co.jp

 

ここであるアスリートについての記事を紹介したい。フィギュアスケート2018年世界選手権銀メダリスト樋口新葉のインタビューだ。樋口は昨季、憧れの五輪代表から落選、その後、堪えきれない悔しさをバネに世界選手権で銀メダルをつかみ取った驚異の精神力の持ち主だ。

 

このインタビューには、樋口新葉のすべてを凝縮したような、彼女の強さの秘密が隠されている。

 

 

例えば、以下のインタビューを見てもらいたい。これは、今季使用するプログラムに関する質問の回答だが、樋口が選曲から勝負に出ていることや、その戦略が伝わってくる。

 

この曲を選んだ意図としては、自分が滑ったことのないジャンルを滑りたいと思っていて、それを振付師の方にも言っていました。何曲か聞いたのですが、この曲が一番盛り上がるし、今までのものと最も違うということで決めました。

 

「自分が滑ったことのないジャンルに挑戦する」というのは、スケーターにとって珍しいことではないが、樋口の驚くところは、その中でも「最も違う曲から決めた」という点だ。実は樋口、過去にも同じような挑戦をしたことで、そのシーズン中に苦戦を強いられた思い出がある。普通だったら辛い記憶から避けてしまいそうな場面でも、あえて苦難に飛び込んでいくスタイルは大したものだ。結果だけでなく、よりよいスケーターになるため必要なものを追う旅。これが樋口流のスケートなのだろう。

 

また、今季から大技トリプルアクセルを投入するリスクについても、しっかりと将来への方向性を見据えていることがうかがえる。

 

人に目標を言って、それを達成するというのが自分の考えなんです。有言実行したいと思いますし、その方が「頑張らないと」という気持ちになるので、そうしています。  

 

 リスクがあるのを承知の上で、「今季だからこそ出きる挑戦」を積極的にしていく。「失敗を恐れていては成功はない」といわんばかりの勢い。安定性を狙うのも戦略だが、長い目で見て大技に挑戦できるのは、タイミング的に見ても今季がベストであることを熟知しているのだろう。遠回りしてしまうかもしれないが、これもまた4年後へのひとつの戦略として見守る側には理解してほしいところだ。

 

スケート界の歴史に残る人物になりたいです。例えば五輪3連覇だったり、世界選手権5連覇だったり……。人が成し得ていないことを達成したいと思っています。

 

 昨季は代表選考前に気持ちが途切れてしまったこと、落選後は「滑りたくない」とリンクから離れてしまったこと、五輪関連のニュースなど見たくないと思ってしまったこと・・そんなメンタルの弱さを変えたいと、全てをありのままに話す樋口が最後に語った言葉は、まさしくTHEアスリートそのものだった。

 

これほど大きな目標を公言できるアスリートというのは少ない。しかも10代のまだ高校生だ。しかし、これは若さゆえの怖いもの知らずではないことを知ってほしい。少女時代から多くの苦難を乗り越えてきた結果、出している答えがこれなのだ。樋口新葉が恐れていないことがあるとすれば、それはただひとつ、「強気な発言で自分がどう思われようが気にしない」これに尽きる。

 

大切なのは、リンク上の自分がどう映るかだ。そのためには自身を奮い立たせ、厳しい自問自答を繰り返していかなければならない。その姿はメディアが求めるアイドルアスリートとは違うのだろうが、私はこうした強気な発言や、攻めた演技に責任を持ち、自身で切り開いていく侍のようなアスリート樋口新葉を応援したい。

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宇野昌磨の場合

シーズン初戦の豊富を聞かれ、彼はこう答えた。

 

「例年通り、ベストを尽くしたいという一点に尽きる」

 

ショートプログラムの手応えを聞かれ、彼はこう答えた。

 

「以前やったタンゴと似た曲調で、フリーより自信を持ってやれると思う」

 

ルール改正による演技時間の短縮と、ジャンプ数の減少による影響について聞かれ、彼は言った。

 

「前より忙しくなったと思うけど、慣れれば改善されると思う。ジャンプの質を高く跳ぶのは変わらないし、4分間もジュニアの時はやっていた」

 

宇野、SP「天国への階段」に手応え「フリーより自信を持ってやれる」/フィギュア - スポーツ - SANSPO.COM(サンスポ) 

 

僕はただ、自分のやるべきことをやるだけ。そんな風に飄々と答えるのが平昌五輪銀メダリストの宇野昌磨だ。一見、ストレートすぎるその言葉の裏にもまた、ただならぬ芯の強さが隠されている。

 

今でこそジャンパーの宇野だが、実はしばらくの間、男子スケーターには必須のトリプルアクセルを跳ぶことが出きなかった。気づくと、いつのまにか跳べるようになっている他の選手を見ながら何度練習しては転び、悔しさを滲ませただろうか。それでもめげずにトレーニングを積んだ結果、不可能を可能に変えることができた。

 

ライバル選手たちが4回転を複数跳ぶようになれば、負けじとくらいついた。出きなくても、とにかく諦めなかった。地道な努力も嫌がらず、ひたすらレベルアップを目指して大きな選手になっていった。

 

「そうですね、まだ僕を目標にしてスケートを始める選手などは、全然いないと思いますけれども、いつか羽生選手のように憧れとなれる存在になりたいなと思います」

 

これは五輪後に答えたインタビュー。少々自虐が入っているコメントをするのも宇野流といったところかもしれないが、これらが単なる謙虚ではなく、向上心からくる前向きな謙虚さなのがポイントだ。と、いうのも宇野のこうした発言からはいつも、自分に足りない者を見失わないよう自制する姿が見えるからだ。

 

上達したい、現状に満足したくない、これが宇野のモットーといえる。そのために彼は、どんな成功の中にも課題を見つけ、ライバルの良い点を吸収しようと、自分を下げてまで物事を考えているように思えるのだ。決してネガティブなのではなく、そうすることで普通よりも多くの発見を得ているのだろう。

 

宇野もまた、若くにして自身の苦手や弱みと向き合い、受け入れる器を持っているのだから驚きだ。それに加え、きちんと強みも知り、発信できている。人間というのは、なかなか「こう」でありたいと願いつつも、自分の弱さには無関心でいたいものだ。そうであるだけに、トップアスリートとは凄い人間だとつくづく感心してしまう。

羽生結弦の場合

羽生結弦のコメントに注目する人は多いだろう。記者の質問に対する的確な答えと分析力、自らの考えを言葉に変換する力は只者ではない。実際に、人前で用意していない問いに答えるというのは、想像以上に難しいものである。いい年をした大人であっても、質問の意図に沿った話が出きていないことはザラにある。

 

まるで「トップアスリートは頭脳で戦う」という例そのものに加え、鋼のような精神的強さも兼ね備えているのがこの男、羽生だ。長年シニアの王者としてフィギュア界を君臨し、ライバル達を導いてきた苦労は計り知れない。

 

「僕はオリンピックを知っています」

 

これは平昌五輪で見事なショートを披露した後、記者から「なぜこんなに素晴らしい結果を出せたのか」と問われた際の羽生の答えだ。追われる立場でありながら、それをプレッシャーともせずに、むしろ俺は前五輪王者だ!若手と比べて経験だって力にできるんだぞ!といわんばかりの迷いのない言葉、まさに有言実行だった。

 

さらに、羽生自らが名付けた「真・4回転時代」が武器になっていた男子シングルで、若手たちの活躍が目立つ中、途中でジャンプの難度よりも総合力にシフトチェンジした戦略と勇気には称賛しかない。なぜなら、この決断には相当な迷いとためらいがあったと思うからだ。

 

羽生が導いたジャンプ戦国時代に、羽生がケリをつけるといった具合だろうか。あの圧倒的なジャンプの難度にこだわっていた羽生が、勝ちのために戦略を選んだ冷静さと、何を公表しても騒ぎと疑問が飛び交う中で、演技構成を変えた覚悟には五輪王者として相応しい”何か”を見せられた気がした。

 

賢いだけではない、強さ。それが羽生流の戦い方であり、真似ようと思ってもなかなか真似られない武器である。これほど強い選手を倒すのは誰なのだろうかと楽しみな反面、そんな日が来るのだろうかと考えさせてもしまう選手だ。

あとがき

ネットでは自分の求める情報しか手に入りません。それは、無意識に自分好みの情報しか見ようとしないからです。同じくメディアでは、メディアが伝えたい情報しか配信されません。よって、自分から多くの情報や意見を求めない限りは、世の中にどのような流れがあるのかさえ分かりません。

 

今回紹介したインタビューは、あくまで各選手のインタビュー記事の一部に過ぎませんが、この3人の発言から分かるのは、自己流の戦い方とアスリートとしての「強さ」「賢さ」です。自身の発信した内容がどのように解釈されるか分からない現在、思いのまま素直に語るのは大変勇気のいることです。しかしながら、この3人は怖がらずにそれらを口にします。自分を律するために。自分を強くするために。そして、勝つために。

 

生意気、自信家、ナルシストと思われる背景には、このようにして競技者である自身を作り上げることで、いつでも最高の状態へとキープしているのです。

 

これは最近、聞いた話ですが、人は外交的な脳と内向的な脳を持っているかによって、求める刺激が違うそうです。外交的な脳は、考えるよりもとにかく行動することで大きな刺激を得て、内向的な脳は、ひとつのことにじっくり集中し、思考・判断することでエネルギーを吸収するそうです。

 

内向的な人は少しの刺激で脳が満足するらしく、ひとりでひたすら想像したり、反省するのが好きだとか。ちなみに起業家や政治家には外交脳が多く、芸術家には内向脳が多いと言われ、中でも外交脳+内向脳のハイブリットは最強と言われています。

 

なんでもリスクを恐れない外交脳と戦略と心理の天才内向脳が合わさるのですから凄いに決まってますよね。(ただ、人間は誰しも外交、内向のどちらの脳も持っており、その割合が人によって違うようです)もしかすると、トップアスリートなる方たちは、ここら辺の脳の作りが凡人とは違うのかもしれませんね。

内向的外交的な人の脳の反応の違いをDaiGoが解説 - ログミー

 

アスリートのインタビューでは、様々な記事を読むことによって勉強になることばかり。今回取り上げた3人の他にも興味深いアスリートはたくさんいるので、追って紹介したいと思います。

 

(尚、当ブログで紹介したインタビュー記事をリンクから直接ご覧になられることをオススメします。たくさん読まれる選手の記事は、今後も特集されるので、ファンの方は必見です!)

 

※これを書くのに記事が3回消えました。もう最後は秒速で書いたので、文体がいつもと違うくなってしまいました。

 

 

 

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