オオカミのとおぼえブログ

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教育小説比較「森絵都 みかづき」「角田光代 森に眠る魚」


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教育がテーマになっている小説2冊を読んでみました。

 

1冊目は森絵都さんの「みかづき

昭和~平成の塾業界を舞台に、3世代に渡って奮闘を続ける家族の物語。

 

2冊目は角田光代さんの「森に眠る魚」

東京の文教地区で出会った5人のママとその子供たちのお受験&子育てトラブルの物語。

 

教育業界に携わる者と教育を受ける者の視点。小説ではありますが、どんな風に書かれているのか興味があったので、あえて読み比べてみました。

 

みかづき
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467ページあるので結構な分厚さです。

 

戦後の日本の教育について文科省に強い不満を抱える千明。彼女は教員免許を取得後、学校教育には進まず学習塾を立ち上げます。

 

ベビーブームに経済成長、ゆとり教育に公立校の弱体化・・様々な時代の背景と共に闘っていかなければならない塾業界。

 

ネタバレにならないように詳細は避けますが、この本の登場人物たちからは「学校教育だけでは平等に学べなくなっている格差社会」に奮起する古き良きを感じます。

 

公立と私立の学習進度の差や勉強量。もはや学校だけでは受験勉強が間に合わない!と言わんとばかりの通塾率の高さ。それに対する貧困家庭で置いてけぼりをくらう「おちこぼれ」の子供たち。塾に行ける子、行けない子。進学塾に補習塾。相対評価絶対評価

 

教育とは何か。真の教育とは何か。

 

教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。

不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだー。

P457より

 

この言葉がすべてだと思いました。時代が巡る度に新たな問題はつきものです。そしてその裏には「日本を良くしよう」と、やり方は違っても同じ方向性を持ったひとりひとりの葛藤があります。

 

時にはとんでもない失敗もあり、それに巻き込まれて苦労させられる層もいます。今の日本の教育もまさにソレですね。小学校~大学入試まで大荒れです。教育関連のネットニュースや新聞記事には必ずといっていいほど否定的な・・悲観的なコメントが並びます。

 

しかしそれらは決して国内だけではありません。アメリカだって、ヨーロッパだって、お隣韓国だって同じでしょう。みんなどの時代の人間も「こんなやり方じゃお先まっくらだね」と嘆く事はたくさんあるでしょう。

 

この本のタイトル「みかづき」のように、どこか欠けていて、未完成だからこそ改善し、向上させていく価値がある。そう思いました。時代が変われば他も変わる。変わっていくことで、修正して失敗して、成功して、またそれを繰り返す。

 

大切なのは問題に気づき、常に敏感にある事。そこから何が出来るのか、考え、行動にうつす事。そんな風に受け取りました。個人的には朝ドラでやってほしいくらい素敵なお話でした。

 

 合わせて。コロナ休校中にはもともと学校など頼りにしていなかった塾生にとっても塾自粛というかたちで「ひとりで考え抜く力」の必要性が話題になりました。1~10まで人から教えてもらう事と自分で理解し、進めていく事の違い。これは大きいです。後者は地頭や忍耐がかなり関係してくるでしょうね。

 

そんな中、ナガセさんが新たな動きを見せています。休校中に実施した無料オンライン講座を「オンライン学校」とし、小学生~中学生まで無料&飛び級制度をつけてリニューアルするそうです。

goldenretrievers.hatenablog.com

 

少子化の現在、塾の経営も厳しくなってくる中、これは今までお客さんとなっていなかった公立組の中間層を対象とした作戦なのでしょうか。もしかしたら今後はこれまで塾とは縁のなかった子たちにも(学校のかわりに)学習面のサポートがこんなかたちで行き届くのかな~とも思いました。

 

それくらい学校だけでは間に合わない(と文科省も認めている雰囲気)。だからといって全ての子に通塾なんて無理な話。そこに無料オンライン学校がぽーんと出てきました。さて、どうなるでしょうか。もともと有料で受けてる子たちには無関係だし、教育に関心のない家庭はそもそも該当しない。この新たな試みがどんな未来を生むのか楽しみでもあります。

②森に眠る魚

こちらは90年代が舞台となっているお話なので、少し現在とはズレもありますが、母親の狂気と子を思う気持ちはいつの時代も変わらないかな?と思ったので読んでみました。

 

簡単にいうと小学校受験をベースにママ友同士の関係が壊れていく・・というドラマでもよくある内容です。ただ、登場人物たちを見ていると、母と言えども心の中は女子高生。ちょっとお母さんにしては弱いかな?という人物がいた事も隠さず書いてしまいますが、教師も講師も母も子供も自分軸がブレたらダメなんですよね、結局。

 

この軸を他人に委ねたり、自分で築かなかったり、保てないままアレコレ手をつけようとすると破滅します。唯一救いがあったのは、それぞれのお母さんがお受験を通して、自分軸のなさを認めて、苦しみながらも前を向いてくれた事かな。大人になっても、いつまで経っても女子高生のままの自分に気づかず、認めずみたいな人っていますからね。

 

私は小学校受験なるものとは別世界の人間なので、ちょっと厳しい意見になっているかもしれませんが、彼女たちは子どもの人生を考えて、両親が与えられるものをすべて与えているって感覚なんだと思います。

 

その考えは当然の当然ですね。少しの挫折や苦労は知ってもらわなければ困りますが、より良い可能性や道、それを選択できる状況にあればチャレンジするのは、出来るのはラッキーです。

 

中学受験も高校受験も大学受験も母親と言うのは、どうしても子への愛情が大きすぎるあまりピリピリしてしまうもの。笑顔のやさしい母だけではいられない。

 

そんなお悩みは受け止めてあげたいお話です。母親を否定するには留まりたくないかな。上を目指すって大変です。受験と限らず、世の中すべて苦労の上で成り立っていますからね。苦労した分、何かしらプラスなものを得てほしいなーと思いました。

 

まずは、健全な心とそれをベースにした子育てや教育ですね。

 

それに気づけたこの5人のママは良かったんじゃないかな。

 

 

 

以上が比較なんて書いてしまいましたが、教育がテーマになっている別視点から見た小説2冊の紹介と感想でした。

 

特に森絵都さんの「みかづき」はオススメです!ぜひ読んでみてください。

 

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