オオカミのとおぼえブログ

ブログ概要に関しては、ブログトップ記事からどうぞ!

【ロステレコム杯】王者たちの重圧

GPS2017 ロシア大会まとめ

 

グランプリシリーズ第一戦「ロステレコム杯」男女シングルの感想になります。

 

日本からは羽生結弦・樋口新葉・坂本花織選手が出場しました!

 

初戦から4回転オバケのネイサン・チェンと対決の羽生、激戦が予想される中国大会前に何としてもここで表彰台に乗りたい樋口、そして今季シニアデビューの坂本の運命はいかに・・?!

 

※ここでは日本人選手とそのライバル選手たちに焦点を当て、ザックリと語っていきます。

 

まずは男子の結果からどうぞ。

 

【目次】

 

羽生 緊張が技術を振り回す

第一戦からいきなり登場の羽生選手。ちょっぴり緊張気味です。大会前からマスコミに「羽生、4ルッツに挑戦!」と大々的に報じられていたのもあってか、公式練習ではややルッツに気をとられていたように見えました。

 

ライバルのチェン選手がショートから4ルッツを入れてくるため、羽生選手も「少しでも難度の高いジャンプを組み込んでいきたい」と思うのでしょうね。本当はそんなことをしなくても楽に勝てるのですが、やはり羽生選手の中では王者として自分より難しいジャンプをしている選手に勝つわけにはいかないという厳しい向上心があるように感じます。まさに羽生ルール。王者のプライドです。

 

しかし、時にはその追い込みが空回りしてしまうこともあります。今大会を見ていると、練習では安定しているジャンプも、本番では力んだり考えすぎたりしてクリーンにきめることができませんでした。決して調子が悪いわけではないのに、重圧がそれを邪魔してしまうのです。緊張に技術が振り回されてしまう・・これは非常にもったいなく、難しい問題です。

 

ショート結果 94.85 TES49.24 PCS46.61

4Lo<ot / 3A 4T3Tfall

 

ショートではオータムクラシックで回避していたループを投入。練習では上手くいっていたように見えましたが、本番では回転が足りないまま着氷し、乱れてしまいました。さらにコンビネーションジャンプでも転倒。こちらはセカンドジャンプの着氷姿勢が乱れたかたちとなりました。

 

う~ん。本来の羽生選手ならできない構成ではないのですが、滑り慣れたプログラムでミスを連発してしまったことは、本人にとっても少々苦しい結果だったと思います。

 

フリー結果 195.92 TES101.54 PCS94.38

4Lz 3Lo 3F / 4S 2T 4T3T 3A2T 3A

 

フリーでは冒頭のルッツで転倒こそありませんでしたが、かなり堪えての着氷となりました。(でも成功したのは凄い!)いくつかそういうジャンプがあったので、評価の方も微妙になるかなぁ・・と心配していましたが、思ったよりはGOEもついていて、フリーだけを見るとトップなんですね。パーフェクトだったらジャッジはこれ以上にない得点を用意しているのだなと思いましたよ。むむむ、やはり期待が凄い。

 

まぁトータルの結果はチェン選手に敗れて合計290.77点の2位だったわけですが、まだまだ羽生選手が自分の力を出し切れば1位になるという流れは続いているようで一安心?!細かな部分では、スピンの質が羽生比で落ちてしまったところや、アクセルとの相性がやや悪くなっているところなどが気になりますが、これから徐々に修正し、最終的にはいつも通りにきちんと仕上げてくると思うので心配しないことにします。

 チェン 緊張は技術でねじ伏す!

こちらはGPS初戦から王者羽生とぶつかってしまったチェン選手。(以下ネイサン呼び)挑戦者として立ち向かう彼は強かった。

 

ショート結果 100.54 TES57.57 PCS42.97

4Lz3T / 4F 3A

 

ノーミスですが、後半ジャンプが完璧!といえる出来ではなかったため三桁はどうかな~と心配でしたが出ましたね!ネイサンは6分間練習であまり上手くいっていないように見えても、本番では気合いでジャンプを繋げてくるので恐ろしいです。こんなに高難度ジャンプをバンバンとんでたら普通はもっとミスするよな・・というところですが、なぜか安定している不思議。これも技術が生み出す技なのでしょうか。

 

フリー結果 193.25 TES104.85 PCS88.40

4Lz 3T 4F 4S / 4T2T2Lo 2T 3Aot 3A2T< 3Lz

 

フリーの演技は映画「Mao's Last Dancer」よりバレエ”春の祭典”ネイサンらしさを出すための選曲だと思いますが、とってもあっさりしていて「もう少し色をつけた方がいいのでは・・?」と生意気ながら感じました。ネイサンの課題はジャンプなどではなくPCS!若手の中でもシルエットが美しいし、ポージングも指先まで洗練されていて、俗にいう荒っぽさはないのですが、高難度構成だけにジャンプを淡々とこなしていく印象があるので、ところどころに小技を足していってほしいです。そうすればトップ選手たちとあんなに差をつけられずに済むと思いますね。(正直いくらなんでも低すぎ!と思うこともありますが)

 

さて、肝心のジャンプの方ですが、予定していた構成にはならず、やや乱れもありましたが根性で着氷してきました。これだけの構成でも大きく乱れないところは本当に凄いです。しかし2Tを跳び過ぎてしまうというミスをしてしまったのは・・ダメよネイサン。ここは対策をとっておかないとザヤる選手は頻繁にザヤるので危険かもしれません・・織田さんいかがでしょうか?

 

(私の推測によると)キスアンドクライでは「ミスもあったしユヅルに負けちゃったか・・」としょんぼりしていたネイサンとアルトゥニアンコーチでしたが、得点が発表され優勝を確信した瞬間めちゃくちゃ喜ぶ姿にスポーツを感じました。合計293.79点。羽生選手との差はわずか3点ですが、ネイサンにとっては大きな収穫になったのではないでしょうか。ショートの貯金分があったということも大きいですが、あの羽生に勝ったという事実は今後の強みになりますよね。私自身も得点発表前は「どっちが勝つ?これはネイサンの勝ちでいいだろう・・(でも羽生くんが僅差で逆転かしら?)」とドキドキしていましたが、納得の結果で終わりました。

 

こうして追われる立場と追う立場の戦いは、決してバチバチするわけでもなく、スマートに美しく幕を開けました。そして両選手ともこれがベストではなく、まだまだ得点を伸ばせる要素があることが、とても嬉しいですし、次の大会をより楽しみにさせてくれていると思います。男子のコンディションがピークを迎える五輪では、どんな演技が観れるのか今から深呼吸して待たなければいけませんね。

メドベージェワ ギリギリの笑顔

続いては女子。優勝は予想通りのメドベージェワ選手。(以下メドベ)語るまでもなく安定のショート80.75点の首位発進で大会をスタートしました。(ショートについてはいつも通りの出来なので省略)

 

フリー結果 150.46 TES75.35 PCS76.11

3F3T 3Lz / 3F 3Lo 2A2T2T 3S3T 2Afall

 

なんとフリーでは最後のダブルアクセル(タノ)で派手に転倒してしまいました。それでも150点もでるんかい!と思わずつっこみたくなるところですが、ジャンプ以外の要素も上手いので1ミスくらいなんのダメージにもならないのでしょうね。しかし演技後のメドベちゃん、まるで「いやだわ~私ったらうっかり転んじゃった!」ミスなんて気にしてませんから、今日のは偶然よ、私基本失敗しないので!わかった?気にしてないのっ!と、いわんばかりの笑顔を振りまき、アピールしていたことから、私は逆に「あれ?なんか余裕ないのかな・・?」と勘ぐってしまいました。

 

というのも、正直いくつかジャンプの軸が傾いていましたし、あの2A2T2Tの妙な間は3連として認められていいのか?と不安になるレベルだったからです。あとはジャンプ前の沈み込みも気になりましたね。ロシアの選手はこの「沈み込み」が悪化すると急にジャンプが衰える傾向にあると思います。今回は氷が合わなかったのかな?という気がしないでもないので、そこまで心配しなくてもいいとは思いますが、ショートの後も顔が(これ羽生くんもなってる)いかにも「自分を追い込んでる」という表情になっていたのでメンタル的に大丈夫かな?と気になります。きっといくらメドベちゃんでも五輪は初ですし、今季の雰囲気がいつもとは違うという暗黙の重圧があると思うんですよね。そこでいつもしないようなミスが生まれてしまう・・この山を越えて頂点まで登れるかどうかは本人と周りのサポート次第。でも強い選手だからしっかり「自分」を見失わずにこれると思うので、応援したいです。

 

フリーの衣裳は赤から黒に変えて、より大人っぽく婦人感が出て良くなったと思います。やはり前回からプログラムも競技用に少しずついじってきましたね。こうした細かな修正は大事です。おそらく今後も磨きをかけてくると思うので完成形が楽しみです。このプログラム本当に好き。

コストナー 誰もが目指す演技

今大会はメドベちゃんが優勝するのは分かっていたけれど・・日本人選手が頑張れば銀・銅はいけるんじゃ?!と思っていた私は甘かったです。まさか(失礼!)コストナー選手がショート・フリーを揃えてくるなんて・・!!本当に甘かった。調子に乗っていました。ごめんなさいコストナーさん。

 

ショート結果 74.62 TES37.93 PCS36.69

3T3T 3Lo / 2A

 

この構成で74点ですよ!凄いです。でも演技を見て納得。「この選手の後に滑りたくない」という美しい滑りに熟練した表現力。ロシアの選手が「憧れはコストナー」とよくいうけれど、あの子たちが目指しているのはこういう表現なんだろうな(まだ皆その域に達してはいないけれど)と思いました。確かにジャンプ構成だけみるとノービスの子だってできるじゃないか!という意見もそれはそうなんですが、あの全然わざとらしくない自然な身のこなしと、曲に合わせた表情のある緩急なんかは卓越していると思いますね!それとミーシンコーチとも相性が良いんでしょうね~。コストナーに限っては年を取ってからの方が開花しているようにさえ見えます。

 

フリー結果 141.36 TES68.09 PCS73.27

3F2T 3F 3Lo / 3T 2A1Lo3S 2A 3S2T

 

フリーは前回「ミスがあって最後まで見れなかったぞ」・・と失礼をぶっこいていた私ですが、やはりノーミス演技になればプログラムも生きてきて全然違います。「牧神の午後への前奏曲」はスケートファンからも評価が高いプログラムですが、個人的には難しい曲調なだけに小さなミス1つで世界観が簡単に壊れてしまうと思っていて、ベストな時にしかコストナーの長所が輝かないという印象があります。(ジャンプが崩れると助走だけのプログラムになってしまうのが辛い・・)

 

注目したいのが技術点。ジャンプ構成の難度が全然違っても樋口選手の69.37点と約1点しかかわらないのです。セカンド3TやルッツがなくてもGOEでかなりの得点を稼いでいるのですね。これは困った。このコストナーのやさしい構成でもGOEでここまで上げてこられると、仮に今後難度を上げてきた場合、ノーミスなら普通に五輪でメダルをとっちゃうレベルになってしまうではありませんか!いや、それはそれで喜ばしいのですが、日本勢にとっては厳しい展開です。しかし、今回は樋口選手の方でミスがあり、コストナー選手の下になりましたが、樋口選手がノーミスならコストナー選手の上にくる計算だったとは思います。ですので、私はこれ以上コストナー選手が構成を上げてこないことを願います!(キリッ)

 

それにしても、今回の評価には皆さん賛否両論で賑わっていますね。確かに美しさでは群を抜いているのですが、他の選手と比べると動きが足りないというのもコストナー選手の特徴ですよね。しかし女子のジャンプ大会にも限界がきそうな今、ISUもフィギュアスケートの原点的なスケーターを残していきたい気持ちも分かります。それでもコストナー選手が今大会で出した215.98点という得点は、現構成でのマックスでしょうから、あまり悲観しなくてもいいのでは?と思いますね。むしろ選手たちには「こういう勝ち方もあるんだ」とコストナー選手から盗めるところは盗んでいってほしいです。

 樋口 完全に、真剣に、闘うモード

樋口新葉の目が違う。コメントからも厳しさ・強さを感じます。もうこの選手は完全に闘いのゾーンに入っている、という感じ。

 

ショートの結果 69.90 TES36.26 PCS33.34

2A / 3Lz3T< 3F!

 

ショートはノーミス。しかしセカンド3Tが回転不足になってしまい、3Fでは!がついてしまったことで70点台に乗ることができませんでした。本人もとてもとても悔しい表情。それでも「すぐに直せるミス」と決して弱気にはなりません。とても好印象だったのは、表現面。どんどん表情が出てきて、心の底からこのプログラムを演じているんだという情熱が伝わってきました。そこに技術面からもジプシーダンスを表現してくるシニアらしさが加わり、とても見ごたえがありました。PCSはもう1点上でもいいと思いますね。

 

フリーの結果 137.57 TES69.37 PCS68.20

2A 3Lz3T / 2S 3Lz3T 3Lo 2A2T2Loot 3F

 

フリーはサルコウがダブルになったのと3連の最後がつまっただけでしたが、そのわりには伸びなかったな・・と思いました。初め得点を聞いた時には2回目の3‐3で回転不足をとられたかな~と思ったのですが認定されているんですよね。だったらもう少しほしかったなぁという気もするのですが、やはりジャンプの方でGOEがもっと必要なのかなという風にも思いました。特にコンビネーションジャンプは以前よりも高さがなくなってきているので不安要素ですね。でも技術はしっかりしている選手なので、単にからだの成長と共に滞空時間が短くなっただけで、ほんの少しの減量で改善される気がします。樋口選手は大事な大会に合わせてからだも絞ってきますし、ピーキングもきちんと行っていると思うので大丈夫かなと思います。

 

さらに!樋口選手は衣裳も変えてきましたね!最初は「え?あの黒衣裳めっちゃかっこよくて007っぽかったのに!!」とショックを隠し切れませんでしたが、メドベちゃんが黒衣裳に変更してきたので、被らないためにも新衣裳の紺は正解だったかも?と今は思います。しかもジャッジにアドバイスをしてもらって「ドレス感」を出す方向に改善したようなので、ジャッジがいうならその方がいいよね!と、イメージチェンジには安心しました。

 

あんまり前の衣裳がよく言われていなかったからか?「脚長効果」を狙って紺色にしたとか。
f:id:goldenretrievers:20171022170416j:image

胸元のキラキラ感がキム・ヨナの衣裳を思い出させる・・。(これもジャッジのアドバイスですよね。ジャッジの中でボンドガールのイメージはこうなのか。)

出典 asahi.com

 

手袋の部分をよく見ると、少しでも腕長に見せれるように半分肌色に工夫されています。こわいよー!こわいよー!突然何かと言いますと、以前白岩選手が同じような手袋をしていた試合で、手袋がエッジに引っかかったときがありましたよね?あれが心配です。あれにならないためには素材がどんなものだったら、引っかかり事故を100%回避できるのでしょう。

 

さて、樋口選手の話をまとめますと、ショートのミスがなかったら210点台までいけていましたし、ショート・フリーどちらも揃えていたら2位に食い込めたかなと思います。今回のボンドガールは力みが強かったのかな?このプログラムのファンは多いから好きなだけノビノビ滑って酔いしれていいのよ、ワカボンド。ここで3位だったのは中国大会のこと考えると少々厳しいですが、次は今大会よりもパワーアップした演技を期待したいです!

 坂本・ラジオノワ それでも食らいつく!

最後はこのおふたりの感想をまとめておわりにします。

 

まずは坂本選手から。ショートは全部後半にジャンプを組み込んだメドベちゃんと同じジャンプ構成で挑み、結果68.88点をマーク。PCSも30点台に乗りまずまずなスタート!(後半に入れても70点に届かないのは課題ですな・・)続くフリーでは冒頭3Fからのコンビネーションジャンプを予定していたのですが、転倒してしまいます。その後リカバリをしますが、ループで細かなミスがあり、ルッツではeをとられ技術点が62点台で演技を終えました。演技構成点では63点台をもらいシニアデビュー年としては悪くない得点。ただ、持ち味のパワフルな動きと曲の世界観があっていなく、良さが生かし切れていないのが惜しいところ・・。それでも全然漕ぎのないスケートなのに簡単にトップスピードまで持っていく技術と、豪快なジャンプは素晴らしいです。おそらくジャッジも「8点台乗せる?どうする?悩むね。」というラインにいるのではないでしょうか。ぜひ、このチャンスをものにしてほしいです!

 

そしてラジオノワ選手は毎年なんとか食らいついていっているので応援したくなる選手なのですが、ジャンプの質が驚くほど劣化していて苦しい状況ですね。坂本選手よりも下にきてもよさそうでしたが、PCSが68.93点と高く1点差で4位になりました。

 

フリー結果

3Lz3T< 3F! / 3Lz1Lo3S(堪える) 3F2Tot! 2A Lofall 2A

 

ご覧の通りほとんどのジャンプが失敗です。ループに至っては踏み切る段階で転倒してしまいました。今は崖っぷち状態ですが、ここからどこまで仕上げられるかにかかっていますね。もう本当にそれしか言葉がありません。良かったのはいつもスピンに遊び心があるところ。脚が長いと大変ですね。

 次はカナダ大会

以上でロシア大会の感想はおわりです。男子は一か八かでジャンプをとぶ選手が少なくなり、4回転だろうが皆さんバンバン決めてくるので恐ろしいですね。ルッツとかなんであんなコンビネーションできれいにとんでるの?と不思議です。(ボーヤンのルッツは脅威的すぎ)女子は女子で皆トータルで美しくてそのうち順位がつけられなくなっちゃうよ!と思います。

 

そんなフィギュアスケート界に、さらに新しい風を運んでくれる選手が今季中にでてくるのか、でてこないのか。そして王者たちはその席を守ることができるのか?!グランプリシリーズ、次回はスケートカナダ!日本からは無良・宇野・本郷・本田選手が参戦です!お見逃しなく!