自由を極める羽生選手にキャリアの終わりを感じた日
皆さん!羽生結弦選手の2018/2019シーズンの新プログラムが発表されましたよ~。
なんと聞いて驚き!!
SP 「秋によせて」振付 ジェフリー・バトル
FS 「Origin」振付 シェイ=リーン・ボーン
とのこと!!
ショートの「秋によせて」は我らが美男子ジョニー・ウィアー氏が現役時代に使用していた名プログラム。そしてフリーの「Origin」はロシアの皇帝エフゲニー・プルシェンコ氏の代表作「ニジンスキーに捧ぐ」をアレンジしたという、羽生選手がリスペクトするスケーターの名曲メドレーといいましょうか。今シーズンはそんな今までと少し違った選曲でいく予定です。
特にフリーの「Origin」なんて「原点回帰や始まりの意味」を込めて、自ら命名したそうなんですが、これがなんだか意味ありげに感じてしまうのは私だけでしょうか。新プログラム発表と合わせていくつか出された記事の中にも「意味深な発言があるな~」「もしかして羽生くん集大成に入っちゃてる?!」と勘ぐってしまいました。
そこで今回は、え?なぜアナタそう思うの??という理由についてチョコッと書いていきたいと思います。
羽生選手が最終章に突入していると思う4つの理由
羽生選手が幼い頃から尊敬してやまない2大スターをイメージした選曲・・。これだけでも総まとめ感が半端ないのですが、羽生選手の本来の持ち味とは、まさにこのジョニー的なセンスとプルシェンコ的なファイターさだと思っていたんですね。しかし、シニアに上がってからは本人の好きなスタイルよりも、勝つために作られたスタイルに切り替えられていたので(それは正しい)今回の試みには大きな意味が隠されていると、私は考えているんですね。
1.勝ち負けよりも楽しみたい
羽生選手、こんな風に語っておられます。
「勝つとか負けるとかに固執し過ぎることなく、自分のために滑っていいのかな」「初心に帰って、スケートを楽しみたい」
もう既に世界選手権、オリンピックと大きなタイトルを制覇している選手が言うこの一言は重いです。もう最終的なモチベーションに突入した答えがコレなんですよ、きっと。十分に結果を出した選手に与えられるラストステージというか、今まで背負っていた重荷を一度置いて、原点に帰ってスケートをただただ楽しみたい。コレ、歴代スケーターたちもキャリアの終わり頃には同じようなこと言ってたよなぁとしみじみしてしまいました。
2.4回転アクセルを跳ぶ
2018年から適用される新ルールでは、高難度ジャンプを跳ぶことをあまりオススメしない作りとなっています。しかしながら羽生選手はというと、リスキーな戦い方であるとしても「4回転アクセルを今季中に成功させたい」と宣言しています。さらに、
「期限までに跳ばないといけないプレッシャーは感じている」
と、どこか急いでいるようなニュアンスを言い残しています。羽生選手は以前からずっと男子初の4回転アクセル成功を目標にしていますから、今シーズンからは本当に勝ち負け以外に残したいことに向かっているのだなと感じました。
羽生、皇帝になる!新プログラム発表 プルシェンコ氏伝説的作品アレンジ(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
3.幼い頃を振り返るコメント
「やはりあの頃の自分はプルシェンコさんや、ジョニー・ウィアーさんの演技をみて、やっぱりこの曲使いたいなと思いながら滑ってましたし、またこの曲を聴きながら、真似したり楽しんでた自分がいたので、そういう意味でやっぱりこの曲を使って、自分のプログラムとしてやったら、すごく楽しいだろうなって思いましたし、そういう意味でも自分が本当に初心に帰ってスケートを楽しんで、スケート自体を自分のためにやるってことを感じながら滑れるかなと」
羽生結弦公開練習 これからは「自分のために滑っていいのかな」【一問一答2】/スポーツ/デイリースポーツ online
今回出されたインタビュー記事では、幼い頃を振り返る言葉がとても多いです。こういうコメントが出たときファンは覚悟した方が良いですよ!真央ちゃんも引退近くになったら過去を語ることが多かったですから。そういえばキム・ヨナも幼少期憧れだった選手のことを語り出していましたねえ。やはり終わりが近づくと誰もが同じ気持ちになるのかな?なんて思いました。
4.フリーに込められた意味
フリーに選んだ「Origin」。これはプルシェンコ氏の「ニジンスキーに捧ぐ」の羽生バージョンになる、と言いましたが、私的にこの選曲には、単なるプルシェンコリスペクトだけでなく、羽生選手自身の「フィギュアスケートの代表作となるようなあんなプログラムを自分も作ってみたい」という気持ちが込められているのだと思います。
たとえどんなにルールが変わろうとも、その演技の美しさだけは変わらないプログラム。どの時代を通してみても圧倒的に感動するプログラム。そんなスケートを羽生選手は魅せたいと思っているのではないでしょうか。
魂の滑りは歓声から完成へ
フィギュアスケートに興味のない人間の心までも動かす演技。それが出来たら、そのスケーターは伝説となるでしょう。
PCSで満点を出す演技。そんな夢みたいなスケーターは、生涯フィギュアスケート界の芸術家として名を残すでしょう。
私が初めて羽生選手を観た時は、まだ体は細く、体力もなくて、ただひたすら憧れのプルシェンコとジョニーを追い、全力で滑っている少年という印象でした。またそれと同時に、そのがむしゃらさの中には、魂で訴えかけてくるようなメッセージがあることも感じていました。
荒っぽいんだけど、その力強さが魅力的。ダンサータイプではないけれど、心の中をそのまま表現できる才能。その対比が羽生結弦の個性で面白い。「この選手はいつか五輪金メダリストになるぞ」それが当時キノコヘアーの羽生選手に大半のファンが抱いた期待だったと勝手に思っています。
ただ、そのぶっ飛んだ個性は、シニアでは長い間封印されていました。「ゆづるくんはこんなプログラムが似合うんじゃないかな」「こんな選手になるだろうな」シニアデビュー前に考えていたありとあらゆる構想。それをいい意味で裏切ってくれたのがブライアン・オーサーコーチ率いるクリケットの先生方でした。
正直、初めは羽生結弦の個性は俗にいう北米スタイルとはかけ離れているのに!と、羽生選手の売りが薄れていくようで寂しい気もしました。これまでの演技スタイルを見る限り、羽生選手はロシア寄りの滑りが似合っていると思ったからです。しかし、そんな違和感はあっという間になくなりました。なぜなら、羽生選手がクリケットに渡ったからこそ得たプログラムとの出会いがあったからです。
パリの散歩道、ショパンのバラード第1番辺りは、羽生選手がクリケットで培った宝、クリケットに来たからこそ演じられたプログラムの代表例だと思います。こんな素敵な作品を観られたからこそ、今ではカナダ流・ロシア流両方のスケートマインドを手に入れられて良かった、バリエーション豊かな選手に育って良かったと思います。
この2つのスタイルで羽生選手が人々の心を奪った証拠として、世界中の観客から言葉では表現できないほどの歓声をもらいましたね。次は誰のためでもなく、自分のために現役人生を完成させるターンになりそうです。
答えは「ロシア流で締めくくる」
僕は小学3、4年生のとき、『ロシアから愛を込めて』というプログラムをやっていて、そのころからロシア流、ヨーロッパ流の表現、曲が原点にある。(中学生まで指導を受けた)都築(章一郎)先生の原点もロシアにある」
「自分のために滑れそう」練習公開の羽生結弦、一問一答:朝日新聞デジタル(無料で読める部分のみ抜粋)
ロシア流のスケートに魅了され、カナダ流のスケートを修得し、ロシア流の原点に返ろうとしている羽生選手。カナダ流でオリンピック2連覇を果たした現在、羽生選手の野望に残っているのは、ロシア流としての集大成なんでしょうね。カナダ流の集大成は完成したと思いますので、あとは心置きなく自由に滑ってほしいです。
シニアデビュー後しばらくの間、どんなプログラムか似合うか全く想像できなかった私ですが、今回のプログラム発表に限っては滑る前から想像できてしまう不思議さがあります。ああ、またあの中世的なキノコ・ハニューが帰ってくるんだ!それも進化してね、と。
以上が私の「羽生選手の発言・行動からキャリアの締めくくりを感じた理由」でした。
おわりに
なんだか「引退」を煽るような書き出しになってしまい申し訳ありません。実際、羽生選手は引退についてキャリアの終わりに近づいているとは感じているが、具体的に終える日は考えていないそうなので、まだご安心を!ファンの方は、もう少しだな・・とドキドキしつつ、まだ時間はあると気楽に構える時期に突入ということで、その一瞬一瞬をお見逃しなく!!
私なんて真央ちゃん大ちゃんの引退で一度フリーズしてしまいましたが、大ファンのステファンはプロとして大活躍中で、引退後はむしろ来日する機会が多いくらいですし、大ちゃんに至っては今シーズン現役復帰してくれてますからね。現在進行形で好きなスケーターが活躍してくれている尊さは喜び以外の何ものでもありません。
ですから、残り少ないであろう羽生選手含め、先輩スケーターたちの現役生活を精一杯応援して、次のステップへ気持ちよく駆け上がれるよう送り出してあげましょう!!回転不足だ~エラーだ~レベルだ~とかこの際、忘れて楽しみたい!!実際スポーツである以上は無理ですが、フィギュアスケートはスケーターの人生を映し出すものであると思っているので、純粋にそこを楽しみたい!そんなシーズンがあってもいいですよね!
と、いうわけで、今シーズンはオリンピック明けですし、少し違う観戦の仕方で楽しみたいと思います。スケートファンの皆さん、次の4年間までまたよろしくお願いします。
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