オオカミのとおぼえブログ

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【感動のフリー】メドベージェワが、宮原が、氷上の天使たちが平昌で舞う

2018年ピョンチャンオリンピック

 

女子シングル総合結果

 

1 ZAGITOVA Alina OAR 239.57

2 MEDVEDEVA Evgenia OAR 238.26

3 OSMOND Kaetlyn CAN 231.02

4 MIYAHARA Satoko JPN 222.38

5 KOSTNER Carolina ITA 212.44

6 SAKAMOTO Kaori JPN 209.71

7 CHOI Dabin KOR 199.26

8 SOTSKOVA Maria OAR 198.10

9 TENNELL Bradie USA 192.35

10 NAGASU Mirai USA 186.54

11 CHEN Karen USA 185.65

12 TURSYNBAEVA Elizabet KAZ 177.12

13 KIM Hanul KOR 175.71

14 RAJICOVA Nicole SVK 175.19

15 DALEMAN Gabrielle CAN 172.46

 

以下省略→Olympic Winter Games PyeongChang 2018 - Ladies Single Skating

 

 

2017/2018シーズンの最も激しく儚いメドベージェワVSザギトワの戦いは、激闘の末、ザギトワ選手の勝利で幕を下ろしました。

 

納得の順位

1位のザギトワ選手はショートで82.92点のハイスコアと合わせて歴代最高点を更新、フリーでも圧巻のノーミス演技でオリンピック初出場・初優勝を飾りました。ちなみに、この金メダルはOARにとっても第一号であり、15歳と281日での優勝は史上2番目の若さでもありました。2位のメドベージェワ選手はショートで81.61点、フリーではなんとザギトワ選手と同点の156.65点という結果を受け、惜しくも僅か1.31点差で銀メダルとなりました。しかし、ケガの影響からか、本来の滑りとは言えない中、今できることを精一杯やれた演技には今大会一番の拍手を送りたいです。3位のオズモンド選手は、何かと大舞台でショート・フリーを揃えることが出来ないという課題がありましたが、ここにきて生涯の中でもトップ3に入るほどの見事な演技で銅メダルを手にしました。そして日本の宮原知子選手は、ショート・フリー合わせて自己最高記録を更新し、日本女子歴代最高得点の222.38点で4位、同じく日本の坂本花織選手もフリーでは小さなミスこそありましたが、最終グループの緊張感に負けない堂々とした演技で6位に輝き、日本勢はふたりとも入賞を果たす結果となりました。イタリアのベテラン、コストナー選手は団体戦での疲れもあり、ソチに続く表彰台には届きませんでしたが、誰よりもスケートを愛する喜びを表現し、5位に食い込むことが出来ました。

 

こうしてみると、最終グループのTOP6のメンバーは露②日②伊加で、順位と人は違えどグランプリファイナルと同じになっていましたね。私は日本人選手が、「勝てない」と言われる中でも、必ず上位に名を連ねてくる今シーズンの強さには称賛しかありません。本当によく頑張ってくれたと思います。宮原選手、坂本選手、お疲れ様!日の丸を背負った緊張の中、素敵な演技をありがとうございました!

 

そして、表彰台に上がったメンバーは全員、納得のいく滑りと、結果だったと思います。おそらくこの順位に不満がある人は少ないのではないでしょうか。それくらいギリギリのところまでお互い力を出し合い、切磋琢磨した大会でした。

 

ショート:魔物に勝てたもの

大会中、日本ではやたら「魔物はいましたか」「魔物に勝てましたか」と、魔物に関する質問をするマスコミで溢れかえっていました。これにはある意味、本番前からマスコミが魔物を「無理に作っているんじゃないか?煽っていないか?」と少々疑問に思うところでもありましたが、実際にショートで選手の明暗を分けたのは、この魔物(緊張感)に打ち勝つかどうかだったと思います。ショートでは各グループの第一滑走者がミスを連ねる中、同じく第4グループで1番滑走だった坂本選手のことを思うと、「6分間練習の雰囲気から急にプログラムを迎える緊張感に飲み込まれてしまわないだろうか」と心配でしたが、そんな不安はどこかに吹き飛ばしてしまうほどのパワー溢れる情熱的な滑りでお見事でした。坂本選手のなにが他の滑走者と違ったのかといえば、この「張り詰めた空気に負けない集中力」といっていいかもしれません。初めは、後半にジャンプを詰め込む坂本選手の構成は、身につくまで苦労がありましたが、一度味方につけると、オリンピックのような極度の緊張を強いられる場面では、前半にいきなりジャンプが入らない分、呼吸を整え、独特な雰囲気から一度落ち着き、身体をならすことができるメリットがあったのではないかと思います。ここにきて、「月光」が魔物に打ち勝つ効果を最大限に発揮してくれた。まさにこの点こそがオリンピックのためのプログラムとして用意された魔力だったのかと、驚かされました。また、回転不足が不安視されていた宮原選手も「よくやった」という会心の出来でしたが、ミスパーフェクトと言われるあの宮原選手でさえ、ショートの前は今にも泣き出しそうな顔をしていました。私はもう何年も宮原選手を見てきましたが、あんなにも追い詰められている彼女の表情を見たことがありません。おそらくこれが最初で最後。ケガから復帰した時でさえあんな顔を見せたことはなかった。これがオリンピックなのか・・。それでも課題を克服し、最高の滑りを魅せてくれた宮原選手を改めて好きになりました。

 

フリー:ベストを尽くせたもの

ショートが緊張に打ち勝てたものに与えられるステージだとすれば、フリーはベストを尽くせたもののためにあると感じました。それくらい上位3選手と宮原選手の力の出し方には、女子シングル最強といえる精神ゲームの世界であったと言えます。もはや、ミスなどしないことが前提で、あとはどれだけ今までの自分の力を超えるものを発揮できるか。残念ながらメドベージェワ選手にとっては技術的にベストな状態ではなかったかもしれませんが、ザギトワ選手、オズモンド選手、そして宮原選手のフリーからは彼女たちが彼女たちではないような、そんな気迫を感じました。それくらいこれ以上にない力を出し切ったと思います。いつもミスする選手がミスをしないのがオリンピック。だからこそオリンピックではオズモンド選手には警戒しないといけないし、常に自身もベストをキープし、少しでも彼女に追いつけるようにしなければいけない。結果を見れば、オズモンド選手と日本女子の差はまだまだありますが、彼女たちは最後の最後までライバル選手をリスペクトしていたからこそ、良い演技が出来たのだと思います。ショート後に「オズモンドはノーミスできないから日本にチャンスがある」と声高にしていたマスコミは本当に恥ずかしい。日本勢は、全選手が力を発揮してくると思っていたからこそ、自分の滑りが出来たのです。自分に勝てた、それが日本女子の強さなのです。

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美しきライバル

ピョンチャンオリンピックではスピードスケート女子500Mで金メダルを獲得した日本の小平奈緒選手と銀メダルを獲得した韓国のイ・サンファ選手の美しきスポーツマンシップが話題になりましたが、ここフィギュアスケートでもメドベージェワ選手とザギトワ選手の美しきライバル対決に涙したファンも少なくありません。彼女たちは出身国が同じというだけでなく、コーチも同じという同郷・同門対決。このふたりに「対決」などという安っぽい言葉は相応しくないかもしれませんが、正確な表現が見つからないというのが本音。もしあるとしたらそれは新たに作られた日本語であるだろうと言わんばかりの重く、美しい戦いでした。シーズン序盤、プログラム変更をしたり何かと慌ただしい動きを見せていたメドベージェワ選手は、その裏で足の負傷と体の成長に悩まされていました。私たちからすれば細すぎるくらいに見えるその体も、関係者からはダイエットを指摘されるほどの過酷な生活。そしてプレッシャー。ロシアのドーピング問題ではシーズン中であるのにも関わらず、演説に駆り出され、その間どんどん飛躍していく後輩を見ていてどんな気持ちだったのでしょう。それでも大会後メドベージェワ選手はこう言いました。「【もし】は【もし】でしかない」「私は今この時を生きている。過去を振り返りたくはない。」ケガがなければ、あの時こうしていれば・・・そんなことは今日の結果には関係ないと、私は自分の力を出し切ったのだと、そう答えたのです。フリー演技後に見せた涙と得点発表後の涙には、メドベージェワの口から直接語られなくても、それらすべての思いが伝わってきました。あの時のエテリコーチの何とも言えない表情、そして優勝したザギトワ選手が悲しそうに、達成感に満ち溢れた目でぬいぐるみを見つめていた姿には心が震えました。キスアンドクライで一瞬涙したものの、コーチから何か言われ、パッと笑顔で観客に応えたメドベージェワ選手にはアスリートとしてのプロ根性を感じました。

 

ザギトワ選手も自身の今は、メドベージェワ選手が常に良いお手本となり、そばにいてくれたからだと言っています。このお互いを尊敬しあう素晴らしいメダリストの関係にはオリンピックメダリストという結果だけでなく、その競技に対する努力、愛情、すべてにおいて私たちはとてつもなくハイレベルなものを見せつけられているのだなと実感した大会でありました。

 

次の4年まで・・

長かったようで短かった4年間。たった1シーズンでここまで勢力図が変わるのも珍しいのではないかというくらい慌ただしい4年間でした。以下に、各選手の感想を書いていきたいと思います。

 

ザギトワ

その成長スピードには誰もついていくことが出来ませんでした。オリンピックでのジャンプはすべてにセカンドトリプルが付けられるのではないかというくらい上質な出来で、新潟にいるときからもザギトワ選手の調子が凄くなっていると聞いていたので、これは金メダル一直線だな、と思っていたら本当にその通りになりました。ショートのコレオシークエンスには今までに見えなかったザギトワ選手の感情が伝わってきました。結果、後半ジャンプ作戦は成功でしたね!おめでとう!できれば、長く選手を続けてほしいです。

 

メドベージェワ

ショートでミスがなければ、まだ少しはザギトワ選手からリードできる点を与えられるのではないかと予測していましたが、新潟合宿の時からややジャンプに不安があったようなので、心配して本番を見守っていました。しかし、以前より筋力が落ちた細い脚からはいつものスピード感や流れが感じられず、ショートでトップに立つことはできませんでした。得点が出た時エテリコーチも一瞬驚いた顔をしていましたね。それでもメドベージェワ選手は自分の状態を自身が一番分かっていたからでしょう。この結果にも動揺することなく、フリーではやるべきことをしっかり出し切りました。確かにメドベージェワ選手のジャンプは天才型というよりは努力の賜物なんだと思います。今後そのジャンプがどこまで維持できるかは、本人の努力だけでは難しい部分もでてくるかもしれませんが、将来的にはコストナーのような芸術面で愛される選手になってほしいです。

 

オズモンド

ブラックスワン。完成するとあんなに凄いプログラムになるのか、と、いうほどオズモンド選手から気迫を感じました。絶対に負けたくないと思って滑ってましたよね。それくらいの強い意志、まなざしでした。なにより脅威に感じたのは、そのプログラム構成。オズモンド選手が緊張で乱れやすくなりやすい箇所に必ず、一度心を落ち着かせるための「休みどころ」があるんですよね。あそこには完全にやられた~、とその戦略力にひれ伏しましたよ。今までミスが多かったので、そういう意味だと気づきませんでした(ごめんなさい)それにしてもさ、オズモンドさん、最後さとこちゃんとなぜハグしなかったんだい?気づいてなさそうでしたが、ザギトワとしたならさとこちゃんともしようよ~。あの場面はメダリストの方からいってほしかったな。(もしや日本勢はライバルと認識されてなかった?!)ぜひ、次はハグしとくれ。銅メダルおめでとう!

 

宮原

オリンピックに間に合ってくれて良かった!自己ベストを更新してくれて良かった!もうそれだけ!さっとんにはそれだけだ!!ありがとう!!この4年間日本のエースでいてくれてありがとう!!ショートでメドベージェワ選手の後、リンクを瞬時に桜色に染めたサトコの表現力は凄いんだぞ~!

 

コストナー

一番力を出し切りたかったであろうオリンピックで、一番実力を出すことができなかったんじゃないかな。試合数を見れば、それは当然どこかで疲労感が出ちゃうよね・・と同情してしまいますが、コストナー選手自身は年齢のことなんて関係ない!ときっぱり言っているので、自分らしい演技が出来たんだろうなと思うことにします!ずっと笑顔で滑っていましたしね。もうあの域に到達すると競技に対する見え方も違ってくるんだろうなぁ。さとこちゃんを気遣ってくれたり、フィギュア界の母みたいな存在ですね。

 

坂本

ショートが進化していてびっくり。坂本選手は表現面においても化けるかもしれないと初めて思いました。おそらく今シーズン、坂本選手は、オリンピックを目指していた気持ちはあっても実際に行くとは思っていなかったのではないかなと思います。もし、坂本選手の調子がもう少し早く上がれば、あの対応力の早さを見ると、フリーもオリンピック使用のものを用意できたかもしれませんね。来シーズンは、ぜひともお似合いのプログラムで挑んできてほしい!

 

ダビン

まさかソツコワ選手の上に来るとは想像していませんでしたが、まぁ地元ですしね。そこら辺は▽〇☐★・・・。それでも韓国の選手は、あの応援団の圧力にも負けず、力を出し切っている選手が多いのは素直に凄いことだと思います。良い演技が出来て良かったね!

 

ソツコワ

少し人より早めにピークが来ちゃったかな?という感じ。そんな中でもPCSの方では今シーズン評価をのばしてこれたし、集中力も同じくらいのびているところは今後にとってプラスしかないんじゃないかな。この選手は失敗を経験した後が強い伸びしろガールなので、また次に向けて頑張ってほしいです。

 

テネル

滑走順が違っていたら、もう少し違う未来があったかもしれませんが、これも実力のうち。過ぎたことは仕方ないので、USAパワーで前向きに、世界選手権でリベンジしてほしいです。

 

ミライ

3Aは恐怖でしかない存在なんだな、と改めて認識。この技を操るのは勝負の場では困難だと皆さんが思ったことでしょう。しかしナガス選手が(おそらく最後の)オリンピックで何を目指していたかを、現実的に考えたら、強豪ロシアが立ちはだかる表彰台よりも、今できるすべてのことを出し切ることを選んだのだろうなぁと思います。そういう意味では団体戦であの演技ができたことは本当に良かった。一度でもチャンスを生かせる場があって良かったなと、個人戦後しんみりしました。

 

デールマン

一体何がデールマン選手をあそこまで怖がらせてしまったのでしょう。ひたすら見ているのが辛い時間でした。私にはこの苦しみが晴れる日を願うことしかできません。

 

フィギュアスケートが進む道

最後に、オリンピックを観て、「そう、そう、こういうことが違和感だったの!」という気持ちを代弁してくれる記事があったので載せておきます。まだ読んでいないという方はぜひご覧になってください。

 

 

number.bunshun.jp

 

タイトルの通りプロのダンサーたちに、芸術目線で女子の評価をしてもらったという内容なんですが、多少日本人にリップサービスはあるだろうとは思いつつも、読んでいると、同意できる点がありすぎて・・。確かにフィギュアスケートにおいてジャッジが注視している部分というのは、これらの意見とは違うものだと理解していますが、技術点的にも演技点的のも限界が見えてきそうな今、一度、評価の仕方についても色々なやり方を参考にしてみていってほしいな、と思いました。

 

このままだと、北京までのトップ選手は全員後半ジャンプになって、全要素同じところに組み込むプログラムが大量発生してしまいかねません。だって、ルールがそうである限り、点が出るなら挑んできて当たり前ですよね。そうなると曲も後半に盛り上がるものが流行るでしょうし、つなぎで忙しいますます謎の表現力の集大成になってしまいます。今回正統派プログラムで滑ったオズモンド選手でも3位が限界なのは、この時代のルールが物語っています。

 

決してロシアの選手を批判しているのではなく、ザギトワ選手にあんな忙しそうな振付を与えなくても、勝てるような評価方法にしてほしいということ。もう少しひとつの動きを長く余韻を残せるくらい余裕を持たせる演技でも、十分な評価を与えてあげられるようなルールであってほしいです。若い選手がベテランに勝つには、誰よりも過酷な構成で挑まなければいけない。ザギトワ選手のような若い選手の本当の良さを評価する項目がないなんておかしい・・。過剰なTRはやる方も見ている方も疲れるだけ。もっと選手ひとりひとりの個性を一番にしたスケートが見たいです。できればジャンプは前半に何本、後半に何本と規定、タノも回数制限でここぞ!という場面で曲に合わせる、女子はスパイラルの復活くらいあるといい。1.1倍をとことん使いたい選手は後半にコンビネーションジャンプを持ってくればいい。なんなら演技終了ギリギリで跳んだジャンプにはプラスしてあげるのもいい。(もちろん演技終了まで〇秒以内の間とかきめて)ステップのレベル判定は厳格化し、5段階評価かGOE幅を広くするだけでも、かなりバラつきがでるんじゃないかな。

 

選手は技術面でやることが多すぎて、かなり体力的に消耗しているように思えます。ここで一度、演技面とバランスをとるためにも、技術面がハードになりすぎないでほしいなと思います。上のようになってもロシアなら余裕で勝てると思いますしね。私はザギトワ選手やメドベージェワ選手をできるだけ長く見たい。だからこそ綺麗ごとなしで言いました。

 

日本勢にとってPCSは欧米の選手と比べると辛いものがありますが、彼らの持つ文化と日本独特の文化を見ると、パフォーマンスの面で日本は控えめに映ってしまうのは自然といったら自然。それでも、表現というものは内側から生まれるものには変わりありません。あとは、その内なる情熱をいかにして外側に表現するか。内側の引き出しなら日本勢の方がたくさんもっているはず!技術と表現の二刀流でそれを酔いしれるくらいの勢いで出していってほしいです!頑張れ日本女子!

 

最後に、長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。

 

おまけ:私、何気にここで適当に書いたオズモンド評が当たっていました・・。でも嬉しい誤算は、宮原・オズモンドのオリンピックでのショート・フリーのTES差が共に約1点しかなかったところ!さっとん、最後までGOEの壁と戦ったんだね・・涙涙

goldenretrievers.hatenablog.com

 

 

おわり