オオカミのとおぼえブログ

主にフィギュアスケート、BSやNHKの歴史・紀行番組について書いています。オオカミだけど一匹じゃないブログ目指します!

「又吉直樹 第二作への苦闘」NHKスペシャル

2017年2月26日にNHK総合で放送された「NHKスペシャル 又吉直樹 ~第二作への苦闘~」のまとめと感想になります。

 
f:id:goldenretrievers:20170227124627j:image

 

あらすじ

築30年の6畳、家賃4万円の風呂なしアパート。そこは2015年「火花」で芥川賞を受賞したお笑い芸人ピース又吉直樹の仕事場だ。現在売れっ子芸人×作家という二足のわらじの中、第二作の執筆に挑んでいる。何もない部屋で架空の物語を生む孤独な作業。すべては第二作目にふさわしい作品を書くために…。そんな又吉直樹の作家としての苦闘を追った。

 

 

何もないところ

又吉には毎日、芸能関係の仕事から自宅に戻る前に必ず寄るところがある。それは別名「第二の仕事場」とも言える執筆活動のための部屋だ。この部屋は食べるのにも困っていた時代を思い出させてくれる又吉にとっては大切な場所。何もないところだがそれが逆に仕事をはかどらせてくれるのだ。

第一作「火花」は250万部のベストセラーになり、又吉はあっという間に人気作家の仲間入りを果たした。現在はそんな前作に負けないような作品の執筆に向けプレッシャーの中、励んでいる。

 

 

文学性と大衆性

又吉は第二作目に「恋愛小説」を選んでいた。主人公は売れない劇作家で、その苦悩を全身で受けとめてくれる恋人がいる。そして二人の間で起こる様々な出来事を経て成長していくという話だ。

恋愛小説を選んだのには理由がある。それは前作「火花」で普段本を読まない層にも「話題」を通し読んでもらったものの、その評価はどれも「難しい」と判断されたことがきっかけだった。そこで又吉は、文学性を全面に出した本ではニーズに応えられないのではないか、自分の小説には若者に「おもしろさ」を残す必要があるのではないか?という2つの思いの間で揺れた末、文学性より「大衆性」に比重をおく道を選んだのだった。

 

 

葛藤

ある日数ヵ月ぶりに4日間のまとまった休みをとれた又吉は執筆のため札幌へ飛んだ。今回仕事場に札幌を選んだのは、そこが下積み時代の苦しかった記憶を思いおこす場所であったからだ。できるだけ当時の心境を物語に重ねていきたい…そんな思いで原稿用紙100枚分を書き上げた。

しかし休み明けの数週間、又吉を待っていたのは数々の仕事の山だった。芸人としての多くの活動に合わせ、他のエッセイや雑誌での執筆…又吉はあまりの忙しさから第二作への時間が思うようにとれず原稿は全く進まずにいた。そうしている間に、どんどん話は浮かばなくなっていく…。焦った又吉は密着取材中で今の不安や葛藤を口にするようになっていった。

若者にも読みやすいようにと恋愛要素に力を入れようとするとなかなか筆が進まないのだ。その姿はまるで、本当はニーズに応えたいというより、どこかで個性を出そうとして難しくなっているのではないか?そんな風にも見えた。

 

 

完成

又吉はそんな自身の葛藤から抜け出すため先輩作家である古井由吉氏に会いにいった。そこでは又吉の今後についての貴重なアドバイスと原点を振り返るような言葉を貰うことになる。

それは、芸人と小説家の「切り替え」も大事だが、それと同時に「つながり」も大事だということ、そして小説の面白さとは悩みに悩んで生まれた「破綻の面白さ」だということだ。

又吉が今まで自身の小説に盛り込まなければならないと勝手に思い込んでいた「個性」や「面白さ」は、実はわざわざ作り込まなくても既に彼の小説に生きている。それに気づいた又吉は大衆性に向けての「恋愛要素」ではなく、より文学性の強い「劇作家の苦悩」を書くことに力を注いだ。

 

こうして完成したのが又吉直樹の第二作「劇場」だ。

デビュー作で賞を受賞し、ベストセラーになったからといって何か悟ったつもりでも、それは何の役にも立たないとわかった。第二作はまた、デビュー作とは全く違った生き物であり、最初からやり直すつもりで書かなければいけない。さらに本当の勝負はというと、こちらもまだまだこれから先の話なのだ。

 

「劇場」を書き終えそれらを知った又吉は今日も二足のわらじでその「葛藤」を書きつらねていくのだった。

 

 

感想

告白しますと私は「火花」を読んでいません!理由はそれほどお笑い好きではない私にとって「芸人を目指す主人公」という部分がただ単に魅力的に映らなかったというだけです。でも小説そのものは面白いと聞いていたので、第二作が出たら読んでみたい!という興味はありました。ちなみに又吉さんのあの独特なテンションは好きです。

今回は番組内で第二作の内容を朗読しちゃっていました。個人的にその中で気に入った箇所がいくつかあったのでこちらは読んでみたいと思いましたね。例えば公開されていた中で…

家の鍵を開けると、沙希が焚いたお香の匂いがした。部屋に灯りがともる。僕より先に慌ただしくソファーに腰を降ろした沙希が僕を見上げて、「ここが一番安全な場所だよ!」と笑顔で言った。その言葉はいつまでも僕の耳に残った。たしかに、あの部屋が一番安全な場所だったのだ。

又吉直樹「劇場」より

という風な場面があるのですが、これは実際に又吉さんが下積み時代に思いきって買った3万円のソファーから生まれた描写なんですね。先の見えない生活の中、このソファーに寝転ぶ時だけはささやかな幸せを感じられたという体験を組み込んだものです。こんなに小説の中身を放送しても良いのか?と思いましたが、まぁ宣伝も兼ねての番組だったのでしょうね。結構印象的なフレーズを拾って紹介していたので、狙ってるなと思いました。

 

番組の全体的な感想を一言で表現すると「羨ましい!!」です。私も昔から小説家に憧れたことだけは何度もあるので、本人は苦しんでいるのでしょうが私にとっては、それさえも羨ましい悩みだなぁと思って見ていました。

何を書いたら良いか話が頭に降りてこない!と葛藤を口にしていた場面でも、その取材に答えていた内容からストーリーが作れるのでは?というくらい本格的に作家をしていて憧れましたね。

しかし、芸人をしながら作家もこなすというのはハードすぎますよね。だって普通に名の通った芸人さんなわけじゃないですか。こちらが想像する以上に多忙な業界だと思うんですよね。私の好きな某有名作家さんも執筆のためには他の仕事を休職してたりするので、又吉さんも今後このペースで続けられるんだろうかと気になるところではあります。

 

それでも好きなことを仕事にできるって良いですね!好きなことが悩みになるという辛さはあるかもしれませんが、それでも好きなことですからね。何でも悩みは付き物なら嫌いなことをイヤイヤしながら苦しむよりは良いかな…と感じます。私も好きなことで食べていきたーーい!と思う番組でした。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。