オオカミのとおぼえブログ

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スケート靴革命なるか?燕産ブレード

 

 

以前こちらの記事でも、ちらっと書いた「もっと安くて、上質なスケート靴があったら・・」という希望について

 

goldenretrievers.hatenablog.com

 (詳しくは、目次の”①スケート靴”をご覧ください)

 

ここで私は、選手たちが使うスケートの道具の中でも最も消耗が早く、費用も高いスケート靴が、今後よりよい技術や素材で進化を遂げていけるように、どこかの企業や職人さんたちの手でどうにか出来ないものか・・と呟いていました。

 

そんな中、さっそくですが、スケート靴のブレード(刃)に関する某所での取り組みについての動きがありましたので、ここでひとつご紹介したいと思います。

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刃物の町、モノづくりの町で

2018年3月20日に、新潟県にある「新潟アサヒアレックスアイスアリーナ」で、スケート靴のブレード開発・研究に取り込む地元燕市開発研究会が、その試作品を完成させ、元選手たちに試滑走をしてもらい、滑り心地を調査しました。

 

このブレードプロジェクトに携わっているのは、燕市にある9社と県のスケート連盟などの団体。研磨や加工、それぞれで、各企業の専門分野を担当し、4種類の素材から試供品を作りました。

 

燕三条といえば、古くから「職人の町・モノづくりの町」として有名で、最近はメディアにも世界最高の鍛冶技術が取り上げられ、特に包丁やハサミ、爪切りなどは海外からも注目されています。その中でも切れ味抜群で、買ったら一生モノといわれるSUWADAさんの爪切りは、予約待ちしないと手に入らないほど大人気だとか。

 

この素晴らしい金物・ステンレス文化がブレードにどういかされていくのでしょう。良いモノが出来れば、スケート界の発展にも繋がりますが、上質で手が込んだものほど価格はますます上がることから期待半分・不安半分といったところです。

 

滑り心地は?

さて、その職人技の集大成のブレードの履き心地はどうだったのか。今回は試滑走で、あの岡崎真さんに滑ってもらいました。その感想は「市販品よりも確実に滑るものもあり、好感触だ。一方、最初に氷に乗った時に違和感があり、検証が必要だ。」とのこと。まだまだ改善する必要はありますが、悪くもなかったそうですね。ただ、ブレードは滑り過ぎても良いというわけではないと思うので、ここから先は課題が多いかもしれません。現時点では、一般層向けにと開発されているそうですが、ゆくゆくは選手が使用できるように作っていきたいとのことです。今後は、会議・研究を重ね、完成へと試行錯誤していくそうなので、次回の試滑走ではより進化したブレードになることを期待したいです。

詳細&情報元

http://www.niigata-nippo.co.jp/sp/news/local/20180321381925.html

 

険しい道も切り開く道に

今回の試作品は、全くスケート靴のノウハウがない状態で一から研究し、作ったそうです。そのため大手メーカーの作品よりはまだまだ差があり、実際に選手に使用してもらうレベルになるには時間がかかるかもしれませんが、こうして国内で未来のメーカーとなりえる存在が生まれ、競争していくのはスケート界にとっては良いニュースになるのではないかと思います。今はまず、このブレードが選手にとって安心してジャンプが跳べるモノ、選手の安全を確実に守れるモノとして進化していってほしいと思います。

 

ちなみに現在あるブレードの多くが海外製で、品質に対し価格が高いというのがデメリットとも言えます。軽量化こそされてきましたが、刃が折れやすかったり、品質が不安定だったりと、何かと困る点が残されているのが現状です。技術レベルが上がった時代だからこそ、ブレードの向上はますます必須になってくる。より強度が高く、長持ちする国内産ブレードの誕生が待ち遠しいです。

 

良ければこちらの記事も合わせてどうぞ

燕市 バレル研磨、複数の素材をテスト フィギュアスケートブレード開発研究会

 

おわりに

スケート靴とブレードの開発に関しては、あの小塚崇彦さんも力を入れていましたよね!強度+軽量化は難しいのでしょうが、日本で女性スケーターだけでなく、男性スケーターもこれだけ認知されてきている競技になっただけに、多方面からの支援と未来への技術投資があってほしいですね。もうフィギュアスケートも単なるお茶の間人気から歴史を重ね、日本人にとって親しみのある競技になってきたからこそ、今はもう次の段階に進んでいかなければならない時なのかもしれません。今後もし、高品質ブレードが開発され、その波で靴の方でもどこかの企業が開発の手助けをしてくれたら、トップスケーターたちにとっては、どんな支えになるでしょうか。選手たちが、ケガなく、一日も長くスケーターとして過ごせる時間を作っていける、そんなことが実現化されたら嬉しく思います。

 

今まで海外が担ってきた分野を別な形で切り開いていくことこそが、私たち日本のフィギュアブームの将来に試されていることなのかもしれません。

 

坂本三原の同門対決?クープ・ド・プランタン

クープドプランタン2018

 

3月16日~18日かけてルクセンブルクで開催されたクープ・ド・プランタン(プランタン杯)。日本女子シングルからは坂本花織選手・三原舞依選手・白岩優奈選手が出場しました。

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主な成績

1位 三原舞依 215.49点 

SP72.98点(ノーミス!!)2位発進 FS142.51点(ノーミス)

2位 坂本花織 202.56点 

SP73.27点 首位発進 FS129.29点(2A3T転倒、3Loがダブルに)

3位 白岩優奈 181.79点 

SP65.67点(ノーミス)3位発進 FS116.12点(細かなミスあり)

 

結果は日本勢のワンツーフィニッシュ!!三原選手はショートのジャンプがついに完成しました~!!やったね!!優勝おめでとう!!

 

オリンピックを終え、貫禄が出てきた坂本選手はショートで好調な出だしも、フリーではややお疲れ?で総合順位は2位。しかし、エネルギーが満タンになったら、またやってくれるでしょう!そして3位は爽やかオーラ満載の白岩選手!100パーセントの出来ではありませんでしたが、セカンドループに笑顔で挑む姿はかっこよかったです!!今後に期待大!

 

フリーを語る

ということで、ここからは、日本3人娘たちのフリーの演技について細かく見ていこうと思います!

 

三原舞依 142.51 76.12 66.39

全ての要素に加点がついたのが素晴らしいです!最も高いGOEの評価を得たのは、冒頭の3Lz3Tとステップのふたつで+1.40点。フリーはもともとミスが少ないorないことが三原選手の強みですが、今回の滑りには何かふっきれたような伸びやかさがありました。TESは76.12点のハイスコア!PCSは66.39点でした。欲を言えば、ショートの演技も含め、PCSでもっと稼げるようになると最強の選手。そこに関しては今季の苦労が来季どんな形で生きてくるかが注目です。また、今大会でのショートの記録はパーソナルベスト!!・・と言いたいところですが、クープドプランタンはISUの主要大会ではないため、記録は非公式のものとなります。ぜひ、次は公式大会でパワーアップした三原舞依として記録を更新してほしいです。

坂本花織 129.29 64.29 66.00

オリンピック後は体調を崩した選手が多い中、坂本選手も何かと大変だったとお察しします。ショートまではかなりキレがあるように見えましたが、フリーでは冒頭のコンビネーションジャンプで1.63点もの加点を叩き出すものの、後半ジャンプでは転倒やループでのミスなどが重なり大きくスコアを下げてしまいました。特に2A3Tでの転倒は、ちょうど曲調がクライマックスへと盛り上がっていくところでの出来事だったので、プログラム全体のバランスとしても惜しい部分があり、残念でしたね。また、途中で息が上がったのかよろける仕草もあり、表情からもしんどさが隠しきれていませんでした。今季はシニアデビューから多くの試合数を重ね、そこから突然のオリンピック、心身ともにハードな日々だったことでしょう。しばらくゆっくり休んで、身体を壊さずリフレッシュしてほしいです。

白岩優奈 116.12 59.86 56.26

3Lz3Loを見せてくれた白岩選手。結果は回転不足(DG判定)となってしまいましたが、彼女ならコンディションさえハマれば認定レベルのセカンドループが跳べるはずなので、今後も期待しています。全体を通しては、やはりスピンやステップでレベルを確実に取れればもっと良くなるのでもったいないところ。スピード感はあるし、その勢いが最後までまったく落ちないのは彼女の一番の魅力だと思うので、頑張ってほしいな。シニアに上がってから、音の取り方も、腕の使い方も、強弱への意識も感じられ、ぐ~んとシニアらしくなったと思います。技術も表現も磨けば磨くほど、もっともっと伸びるんじゃないかという要素が盛りだくさん!今後良い練習が重ねられればいいな。私が彼女の何よりも好きなところは、演技が終わってから数秒ほど姿勢をキープしてから体をほどくその優雅さ。プログラムをとても大事に扱っているんだなぁと、ほっこりしちゃいます。そんなことを思うと、白岩優奈はあと3,4年したら、とても情感溢れるしなやかで美しいスケーターになっているかもしれませんね。

 

坂本VS三原

さて、今大会の結果を見て、坂本・三原、このふたりの今後はどうなのよ?!、という考えが浮かんできました。以前も他記事で書いた気がしますが、このふたり、同じコーチのもとで練習している同士だけあって、性格は違えどスケートスタイルは似ているなぁと思うんですよね。だから長所も短所も一緒というか、完成形の演技のマックススコアも同じくらい。それは今大会を見て確信しましたね。お互い良い時と悪い時の波は違っても、実力的には五分五分。彼女たちの強みはジャンプだけど、エラーがつくかもしれない確率も同じくらい。スピンやステップできちんと加点付きでレベルを落とさなくても、PCSがそんなに出せるタイプではない。スケートもぐいぐい伸びるし、迫力もあるけれど、トップ勢と比較すると、複雑な軌道や緩急、安定した姿勢などといった面ではまだまだ伸びしろたっぷりといったところまでリンクしています。

 

そう、色々見ていて面白いのは、結局このふたりが互いに差をつけるに必要なのはPCSだということ。ジャンプやその他の要素はコンディションだったり、ルール改正次第でいくらでも不利にも有利にもなりますが、この表現の部分では、早くに殻を破った方が抜けてくるのではないかという印象です。

 

双子スケーターの壁

別にこのふたりを対決させる必要はないのですが、今回のフリー66点台というPCSを見ると、今後にあたって本人たちの高い技術力と比べ、「このままここで止まってしまっては惜しいよなぁ」と思うので、どうしても、どうしたらいいのかなぁ~と、コーチでもないのに考えてしまうんです。おそらくこのふたりは、ノーミスしてもPCS70点台は大きな壁になってくるだろうし、今のところその手前の69点でもどうなのかな??という感じですよね。こんなことを言って、来季あっさり70点オーバーしてくれたら願ったり叶ったりですが、実際どうしたら表現面でも評価されるスケーターになるのかなぁという気持ちがあります。これは個人的な目線でですが、ショートに至っては坂本>三原、フリーは坂本<三原という風にプログラムを滑れているように感じます。これも個人的にですが、坂本選手はフリーがショート並みにハマったプログラムであれば、ショートと同じレベルに曲をスケートで表現できる力を持っていると思います。一方、三原選手の場合はどんなプログラムや動きがハマるのか?どの振付師なら合いそうか?が、まだ見えてこなく、いい意味で言えば未知数なところを残します。

 

来季を予測してみよう

三原選手は今季、シニア用・オリンピック用にと挑戦したプログラムで苦戦しました。しかしこれは、彼女の今後にとって必要不可欠な挑戦でもあり、ここを乗り越えなければ激動のシニアで戦っていくのは難しいという状況でした。結果、彼女は最後にショートで70点台、総合で215点台という成績を残すことができました。あとはPCSでトップと渡り合っていく結果を出すことが課題です。

 

ホント、国別対抗戦やジャパンオープンでのお祭り採点は選手にとって罪だったよな・・。あそこでPCS70点とか出さなければ、また違っていただろうな。

 

坂本選手は来季シニア2年目。おそらく彼女も今季の三原選手と同様に、よりシニア用にと進化を遂げた難しいプログラムに挑戦してくるでしょう。そして、そのプログラムをいかにして完璧に滑りこなすか、素早く自分のものにできるが、来季の課題になってくるかと推測します。しかし、彼女の場合、三原選手というお手本を見て、この短期間で伸びてきた選手ですから、もしかすると難なく来季をクリアしてくるなんてこともあるかもしれません。

 

明るい先が待っているといいね

さいごにふたりの明るい未来を願って、私なりの「こうだったらいいな」を語っておわりにします。

 

三原選手には、やわらかなイメージがあります。そのやわらかさが選曲や振付で生かせるといいなと思っています。今季のフリーはまさにそんなイメージにぴったりでしたが、なかなか一部のファンにハマらなかったのは、そのやわらかさが別な方へと作用し、失われていたからなんでしょうね。そのせいで、「こういうのが似合うと思ったけど違うのかぁ。どんなのが似合うんだろう。」となった気がします。せっかくジャンプに流れのある選手なので、演技全体を通しても、ひとつのストーリーのような・・例えば足を止める振付の部分でも「動作」は止まっても「世界観」は止まらないように前後に持ち味の滑らかなスケーティングで工夫があると素敵だなと思います。あとは肩から腕を大きく使うだけでも色んな表現の幅が出来ると思いますし、細かなリズムに合わせて体全体を乗せていけたら、絶対に綺麗なスケートが期待できそうです!今季動作や足元の技術が上手く表現に伝わらなかったのは、プログラムの難度が上がって、無意識に腕や足でバランスを取るポーズになったせいで、腕がふわっと浮いたり下がったり、体の軸がふにゃっと見えてしてしまったのかな~?と思いました。とにかく来季は片足滑走多めの難プロを操る三原選手に期待しています!頑張れ!

 

坂本選手は、今回のショートがオリンピックよりも良くて、月光を見ていると、スピンでも細かい部分の音を意識しているし、最初のポージングの腕の伸ばし方もどんどん綺麗になってきて凄い。そこがフリーだと別人になっちゃうけど、そこはそこで若さ溢れててかわいいな、と最終的に感じました。しかし、坂本選手は意外と?ダンサーになるのかもしれんと思った瞬間でもありました。う~ん、今のところ彼女の方に表現の可能性を感じるんだけど、この芽を育てるには夏の間海外でレッスンとかどうかな?ジャンプの坂本からジャンプとパフォーマーの坂本に変えたい!!

 

以上がクープ・ド・プランタンの感想です!好き勝手なことばかり言って申し訳ないけど、日本女子を応援している気持ちには間違いはありません!ここからの四年が、さらなる楽しみと、感動を届けてくれる時間になると信じて、選手ひとりひとりに悔いのない素晴らしい競技生活が待っていると願って、来季もフィギュアスケートを熱く見守っていきます。

 

おまけ*世界ジュニアの感想

ちょっとここで世界ジュニアの一言感想も合わせて・・。

 

トゥルソワ選手がフリーをTES92.35点で終えられた・・。凄すぎる。4Sと4Tを跳んじゃいましたよ・・。これを4年後も維持出来たら本当の天才だ。優勝おめでとう!

 

また、トゥルソワ選手のジャンプも凄いけど、私はコストルナヤ選手のスケートが好き。ジュニアとは思えない。こんな選手がシニアにきたら一体どんな演技をするんだろうという期待がある。あの洗練された動きと、表現は天性のものなんだろうな。銀メダルおめでとう!

 

さらに私は、山下真瑚ちゃんのスケートも好き。大きいジャンプとスピードに乗ったスケートは坂本選手を思い出させるけど、真瑚ちゃんの場合そこに村上佳菜子ちゃんっぽい女性らしい腕の使い方や表情があって、演技が既にシニアっぽい仕上がり!技術と表現のどちらも期待できそうです!銅メダルおめでとう!

 

紀平選手は緊張しちゃたのかな?紀平アクセルは、前後の流れもクオリティも素晴らしいし、そこに加え、他のジャンプ技術もきちんとしているのが強み。トゥルソワ選手もそうだけど、若いうちから3‐3も3Aも4Sもといった高難度ジャンプを持つということは、それだけ他のジャンプの基礎が完成していたからこそコーチも挑戦させたのだろうし、誰にでも真似できることではないから尊敬しちゃうな。あとはケガに気を付け、プレッシャーを感じずに成長してほしい!

 

短いけど以上です。

 

男子フィギュアがオカマのスポーツという偏見

競技人気の復活を考える③

 

フィギュアスケートにおける競技人気の復活を考える第3弾!!

 

今回は、前回に引き続き、競技人口減少の危機をテーマとし、その中でも、男子スケーターに対する世間の偏見をなくすことに重点を置き、話を進めたいと思います。

 

さっそくですが、男子スケーターに対する偏見とは?について説明していきます。

 

【目次】

 

世間からの偏見

実はオリンピック期間中、ネットでショッキングな書き込みを見つけてしまいました。それは、男子シングルで日本の羽生選手と宇野選手がワンツーフィニッシュを決め、日本中が盛り上がっていた中の出来事でした。

 

某スポーツニュースのコメント欄を見ていると、普段はフィギュアスケートを観ない層の方からたくさんの祝福の声で溢れていました。私はただのファンながらも、とても喜ばしい気持ちになりましたが、次にあるひとつの投稿を見た瞬間、とても悲しく、憤りを感じました。その内容とは・・

 

フィギュアスケートなんて運動神経のないオカマがする競技

こいつらが野球部に入っても球拾いすら出来ないレベル

他競技の奴らがフィギュアすれば5回転回れるんじゃね?

そもそも人口競技が少ない競技でメダル取ったって価値ないし

スポーツじゃない、インチキのお遊戯

 

正直、唖然としましたね。フィギュアスケーターがヒラヒラの衣装を着ていたり、どうしても女子メインのイメージがあることから、男子=オカマかゲイしかいないという風に見られているのは知っていましたが、他の競技と比べて大した苦労をしていないようなこの言いぐさには怒りを通り越して悲しくなりました。

氷上では皆、子猫ちゃん

はっきり言おうフィギュアスケートをヒョロヒョロしたヤツが、くるくる舞っているだけのお遊戯だと思っている君へ。陸上ではスポーツ万能の君も、氷上では子猫ちゃんでしかない。少なくとも氷の上では、陸で当たり前のようにしているその動きの半分以下しか体を自由に操れないだろう。そして、フィギュアスケーターは無筋肉質でひ弱な体型だとバカにしている君!フィギュアスケートにどれほどバランス能力が必要だと思っているんだい?スピン、ジャンプ、ステップはどれも体幹レーニングの賜物だ。ここがしっかりしていなければ回転などできっこない。スケーターは男女共に、その華やかな衣装の下に美しい筋肉を隠している!無駄のない体脂肪率から分かる通り、だらしのない体型をしている選手なんていないんだぞ!いくら運動神経があってもジャンプのセンスがなければ五回転なんて無理ですから~!!

 

・・と、少々熱くなってしまいましたが、男子スケーターにこんな偏見がある限り、世界的にみても男の子の憧れの競技にはなれないよなぁ~というのが心配事です。

腐ってもメディア、利用しなければ損!

では、↑上記のようなことを、どうしたら世間の皆様に知っていただけるか。と、いったら、それはやはりメディアの力が必要なのではないかと思います。

 

よくあるスポーツニュース内のフィギュアスケート特集。ここでは大抵、「今季の目標は?」「選曲は?」「衣装はどんなイメージで?」といったインタビューか、学校生活の様子、チームメイトと談笑する姿、取材用の練習シーン、プライベートショットの画のどれかしかお目にかかれません。

ここには、アイドルの宣伝に近い効果しかなく、アスリートとしての本当に理解してもらいたい部分が、分かりにくく映し出されています。しかし、私はここでこそ、大々的にスポーツとしての男子シングルの真剣さ=カッコよさを伝えてもらってはどうかと考えます。

ハードさが応援に結び付く

例えばコーチが怒るシーン。フィギュアスケートは華やかなイメージが強く、リンクでコーチがガンガン怒鳴っている姿なんて世間からは想像もできないらしいです。当たり前ですが、そこら辺の中学校の部活のコーチですら大会前は鬼なのに、トップアスリートを育てるコーチが終始ニコニコ指導しているわけなんてないんですよね。

男子の場合は華やかさだけでなく、あのピリピリした練習モードを公開した方が、他カテゴリーから共感を得るのではないかと思いますね。(もちろん撮影は練習に支障がない程度に)以前「情熱大陸」で宮原知子選手がコーチにビシバシしごかれるシーンがあった時、ファンからは「これはちょっと・・」と不評でしたが、スポーツ経験者からすれば、あれはよくあるシーン。逆にあのやりとりをみて、「フィギュアって大変なんだな」と、いい意味で思ってもらえたら嬉しいです。

 

どんなことにおいても世間というのは、とにかく他人のハードな姿に「苦労しているんだな」「凄い世界だ」と敬意を示す傾向にあるといえます。男子シングルもそのハードでサバイバルな様子を見せることで、「こいつら真剣なんだ・・」と理解してもらえれば、冷やかされたり、からかわれたりせず、応援し、受け入れてもらえるのではないかと考えます。

欧米では深刻な問題に

ただ、これらの印象をいくら植え付けたとしても、一度偏見を持たれると、なかなか改善できないのが難しいところです。あれだけ優秀なスケーターを生み出しているカナダでさえ、フィギュアスケート=女性のスポーツ、男性スケーター=オカマという偏見が根強くあり、フィギュアスケートをやっていたことでいじめにあい、自殺してしまった選手までいます。

これは辛い・・。本当に悔しい。あの日本でも有名なパトリック・チャン選手やジェフリー・バトル選手ですら、このような環境で競技を続けて来た現実を知ると、これは「偏見」の一文字では済まされない問題だと思います。

オカマだゲイだと、からかう前に彼らは立派なアスリートであり、オリンピアンなのに。努力を知らない者こそ努力している者を叩く。おかしいですよね。また、欧米ではゲイに対しての強い風当たりもあることから、すっかりそのようなイメージのついたフィギュアスケートは、習いたくても「やりたい!」と親に頼めない空気もあるそうです。残念です・・。彼らはずっとこのストレスと付き合わないといけないのでしょうか。

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脱却しよう

昨季から今季にかけて、長年フィギュア人気が低迷していたアメリカで、急にネイサン・チェン選手が注目されたのは、彼が男子の醍醐味といえる四回転ジャンパー(それも数種×複数持ち)だったからだと言えます。つまりは、演技が男らしいからですね。

フィギュアスケートは時々、技術か芸術かと議論されることがありますが、こうしてみると男子に至っては、強い者=高難度ジャンプであり、技術こそが求められ、受け入れられているのだな、と感じます。だからといって、男子から芸術性を取れというわけにはいきません。それでは、競技競技しすぎて遊びの要素がなくなってしまいます。従来からのフィギュアファンが感じるスケートの魅力と、世間が求めるスポーツ性、このふたつの欲求を満たす方向に変えていくには、かなり思い切ったルール改正が必要になってきそうです。

演技時間の短縮

ひとつの案として演技時間の短縮が挙げられます。現在の時間よりも短くすることで、少々忙しめに要素をこなしていこうという作戦。これにより一般層からは、スケーターが演技中は常に何かの技をしているので退屈ではないという印象を与えられると同時に、今まで振り付けで使っていた時間は多少カットされ、彼らの言うヒラヒラした踊りの要素が薄まります。また、ジャンプから次のジャンプを跳ぶ間隔も短くなり、より迫力が出て、男らしさが出せるというメリットも。しかし、これらはファンからすると「これ以上時間を削ったら美しさが消えてしまう!こんなのフィギュアじゃない!」という嘆きに変わってしまいます。そりゃそうだ!

ステップを見せ場に

逆にこちらは演技時間を変えないか、ちょっとだけ延ばすかにしてステップをフリーの見せ場にしよう!という案。女子は体力的にきついけど、男子だからこそ出来るんだ!というスタミナのオンステージ!ステップはレベル設定を細かく変えて、課題で全員サーペンタインしてみてね(鬼)とかだったら面白いんだけどなぁ。ひとつは規定通りに、もうひとつはショー並みに自由に技を解禁させれば、パフォーマンスの幅も広がりそうです。

衣装でオシャレアピール

ここ近年はゲイだと思われたくなくて地味~な衣装を着るスケーターが急増中です。そのうち全員が同じ衣装になるんじゃないかというくらい真っ黒だらけ。ただ、これもまた偏見がありますが、皆が皆白馬の王子様みたいなレースつき衣装を着なければいけないルールはないし、美川憲一ばりのスパンコールを散りばめる必要もないんですよね。

男子の衣装は女子と違ってデザイン的にあまり工夫も出来ないし(なかなかワンショルダーにしたり、背中オープンしたりはね・・)、どうせなら思いっきりラフ&自由にしちゃえばいいのでは?と思いますが、紳士のスポーツだからダメでしょうか。スノボ競技みたいにオシャレもカッコよく楽しもうよ~。ダンサーみたいにクール路線なスケーターがいれば、また見られ方も変わってくるのではないでしょうか。

クールな演技を紹介

むはー!!ここまで書いても、例の書き込みを思い出すとイライラが止まらん!!と、いうわけで、ここで唐突ですが、私が思う男子シングルイケてるプログラムをご紹介したいと思います!!こんなカッコイイんだぜ!!チェケラ!!

 

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まずはこちら。2002年ソルトレークシティオリンピックでロシアのアレクセイ・ヤグディン選手が演じた「仮面の男」より。このハラハラドキドキする感じにスポーツを感じない人はいないはず!もうこの動画は何十回みたか分からない!

 

www.youtube.com

お次は我ら日本の高橋大輔選手。正直、彼の全プログラムをここに載せたい気持ちですが、さすがに無理なので悩んだ結果、ブルースにしました。フィギュアでブルースって凄いですよね?!全然ヒラヒラしていないでしょ!ダンサーでしょ!他にもヒップホップだったり、マンボだったり、有名なバンクーバーオリンピックの「道」だったり、道化師だったり、ビートルズメドレーだったり・・。このスケーターは男子フィギュアのイメージをとことん変えてくれた存在だと思います。

スターを増やしたい

他にも紹介したいスケーターとプログラムはたくさんありますが、今回はこのふたつまで。言葉だけで紹介すれば、ハビエル・フェルナンデス選手なんかはエンターテイメントを大事にしており、彼もまた、違った形で男子フィギュアの魅力を発信してくれていると思います。

あとは、すいません。ハンサム枠とか美男美女枠とかでいくと、羽生結弦選手やテッサバーチュー&スコットモイヤー組なんかはビジュアルだけでも憧れ要員としてかなりの貢献をしてくれています。

こんなことを言ったら怒られそうですが、最初は容姿からファンになってくれる方というのが女性の場合多いので、そういう魅力も少しは武器にしてもいいのかなと、実力もある両選手だからこそ、この際思いました。やはり、どんな形であれ、スター性のあるものに人は惹かれますから、それが「私もこの人みたいになりたい!」と思ってもらえたり、「フィギュアをもっと知りたい!応援したい!」となってもらえればラッキーではないですか。

この世界は時々、芸能寄りの部分が競技の邪魔をすることもありますが、こうした実力の伴った美男美女の存在は、逆に競技を大いに盛り上げてくれるパワーがあります。「俺もキャーキャー言われたいぜ!フィギュアやったらスターになれるかな?」でもいい。とにかく欧米からもスターよ、カモン!

おわりに

男の子がスケートを習うことは、恥ずかしいことではありません!むしろ恥ずかしいのは人をからかうその本人です!フィギュアスケートと限らずバレエでもピアノでもそう!好きなことに打ち込めるのは幸せだし、胸を張ってください。逆に考えて見れば、女子の方が多くて男子が少ない競技ならハーレムですよ!モテますよ!さっさと変な偏見はなくなって、もっともっと競技人口が増えてくれることを願います。

 

最後に、仮にゲイだとしてもなんだとしてもいいじゃない。その人が人生を悔いなく生きれる方法の中のひとつに、この競技があるなら、他人がとやかく言うべきではありません。その人の人生はその人が生きている。皆が頑張っていて、必死に毎日を歩んでいる。男子シングルはカッコイイ競技でもあり、男らしくもあり、芸術的でもあり、オシャレでもあり、ハンサムもいて、多国籍で、ゲイもいる。いろ~んな人たちが切磋琢磨して楽しく過ごす、未来志向の最新型スポーツということで、まとめます。

 

goldenretrievers.hatenablog.com

 

以上で、競技人気の復活を考えるシリーズは完結です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

フィギュアスケートの解説ってこれでいいの?

競技人気の復活を考える①

 

ピョンチャンオリンピックフィギュアスケートを見ていて感じたこと。

 

それは全盛期と比べて「落ちついちゃったなぁ」という寂しさ・・。

 

競技人気の高い日本とロシアでは、男女シングルで金・銀メダルを獲得したため、大きな話題となりましたが、世界的に見るとフィギュアスケートは、限られた範囲の熱狂に治まりつつあるな・・と、ピーク時と比べた会場の様子や、他国の報道から危機感を覚えてしまいます。

 

(羽生選手がアジア全域で新しいファン層を獲得し、大黒柱として繋ぎとめてはいますが、シングル・ペア・アイスダンスと広く見た場合は盛り上がりに欠けつつあるな、というイメージです)

 

元々トリノオリンピック後辺りから、競技人気の要であるアメリカ人選手の低迷や、度重なるルール改正による競技の変化、スター選手の引退が相次ぐなどして、少しずつファン離れが起きていましたが、それを唯一食い止めていたのが日本のファンで、この日本でのフィギュア人気があったからこそ、今日まで何とかショーや試合での席が埋まっているという状態でした。

 

しかし、その日本での盛り上がりも、いつまで続くのか?と、言ったら不安があるのも事実。もちろん「別に人気がなくなったって、前みたいに好きな者同士で細々と応援すればいいよ」という意見もあるかもしれませんが、私が恐れているのは、そこではなく競技人気低迷の行く先です。

 

ただでさえ、日本(と最近はロシア)が人気を支えている状況なのに、そこから日本人ファンが今ほどいなくなったら、この競技はどうなるのか。競技人口も少ない中で、どのようにして新たなスターが生まれるのか。今後、世界からフィギュアスケーターになりたいと思ってくれる子どもたちは増えてくれるのか。(特に海外男子やカップル競技)多くの不安があります。

 

そもそもなぜフィギュアスケートは歴史的に、各国でスター選手を輩出してきても、その競技人気をサッカーや野球のように約束できないのか。「常に勝てる」選手がいない限り、なぜこうも一過性のブームとして忘れ去られてしまうのか。

 

それを私は、ずばり「採点競技」だからではないかと考えます。

 

今回オリンピックを見て一番に感じたことは「競技の分かりにくさ」です。

 

いくら自国に強い選手がいても、いくらこの機会だからと、一般層にフィギュアスケートを観てもらっても、見ていて意味が分からないものには深入りが出来ない、ハードルの高さがあります。ただ、ただ「日本人選手おめでとう」で終わってしまう、それ以上を理解してもらうには、余程興味を持ってもらわないといけない難しさがあります。

 

子どもたちがフィギュアスケートに「感動した!やってみたい!」と思っても、金銭的にも敷居が高いイメージがあるので、どうしても「一般人には遠い世界の競技・・」という見られ方をされており、そこにこうした採点競技の難しさが加わると、気軽に見れるもの・やれるものではない競技と考えられても仕方がないことなんですよね・・。

 

そこで、一体どうしたら、せめてフィギュアスケートが、観る手にも、もっと浸透できる競技=文化になるのかを考えてみた結果、そこには実況解説や専門のコメンテーターによる的確かつ分かりやすい情報の発信が必要不可欠なのではないか、ということに行きつきました。

 

では、どのような解説であったら、採点競技を魅力的に出来るのか。前置きが長くなりましたが、以下にそれらをまとめてみました。

 

 目次

 

曖昧な解説は分かりにくい!

フィギュアスケートの実況あるあるで、「綺麗でした」「流れがありました」「華やかですね」「体がよく動いています」などがあります。皆さんもご存じのように、これらは誰が見ても分かる内容で、別の言い方をすれば、解説者の言っていることが、観る手にも分かる唯一の内容と言っていいかもしれません。しかし、これらの解説を聞いている視聴者の中には「フィギュアスケートって美人が有利なんだ」「スピードがある人が上手いんでしょ」と、その言葉通りに素直に受け止める方が多いのも事実。確かにこれらの解説は、具体性に欠け、形容した表現が多いため、言葉が大雑把に伝わってしまう恐れがあります。解説者の立場からすれば、短い言葉で伝えるには、これが精一杯なのかもしれませんが、逆にこれが「なんだ結局”華”とか”美しさ”とか曖昧な採点なんじゃん」と、誤解される要素に繋がっている気がしてなりません。言って見れば、「綺麗!」や「心のこもった演技だった!」なんて感想は、私のような一般層のファンがSNSやブログで語る内容であり、プロにはプロ目線でしか伝えられない内容というのが視聴者には期待されています。その肝心の部分が、素人と同じ感想で終わってしまうということは、結局フィギュアスケートってそういうものなのね」と、スポーツとしてのレベルを下げられた評価として、世間から扱われているのではないか?という焦りがあります。

なぜ?が続出

ピョンチャンオリンピックを例にしても、スケートファンである私は、周囲からこのような質問攻めにあいました。

 

「坂本さんは、なんであんなにミスしたコストナーより下だったの?」

※「メドベージェワとザギトワは何が違うの?(勝敗を分けた理由)」

本田真凜ちゃんを出せば勝てた?」

※「なんで宮原選手はノーミスで自己ベストでもメダルが取れないの?ジャンプの加点がないの?」

「日本人は手を上げたジャンプを跳ばないからダメなの?」

「フェルナンデスが1位かと思ったけど違うんだね。」

「羽生と他の差って何?どこが凄いの?」

 

などなど・・。いやぁ、自分でも競技後これだけ世間に疑問を残すフィギュアスケートって凄いと思います・・。それだけ大切な部分が説明されていないってことですよね。個人的には、※部分については、注目もされていましたし、きちんと解説なりなんなりしてほしかったです。だって、こんなにも視聴者が疑問だらけなら、解説やコメンテーターって何のために存在していたの?ってなりますからね。ここが成り立たないと、ワイドショーで勝手な憶測が独り歩きし、ますますこの競技が誤解されてしまいます・・。

スケート連盟の対応力

「誤解」といえば、スケート連盟の対応も同じです。例えば、あれだけ連日報道でも心配されていた羽生選手のケガの件についても、ほとんどの関係者が口を濁しながら「羽生選手なら何があっても大丈夫!」としか答えていませんでした。こうした説明力に欠けた発言なら、しない方が信用できます。言葉足らずな回答では、誰も不安を拭うことはできなかったでしょう。

果たしてスケート連盟は選手と意思疎通が出来ているのか?と、疑われてもおかしくないような言動は、多方面において誤解を生んでしまったと思います。別に「二連覇への期待と、ケガが重なり、ナーバスになっている時期だからこそ、今は本番までそっとしてあげたい」の一言で、周りは精神的にサポートしているし、間に合うように努めていることを分かってもらえれば良かったのではないかと思います。

また、団体戦前に突然坂本選手が練習に現れなくなったことについて、マスコミがどうしたのか問いただした時も、関係者は「体調不良」を臭わせるような発言をし、周囲を混乱させました。実際は、他のリンクで練習していただけで、心配するようなことはありませんでしたが、これらを含めても誤解だらけで、あまりにも、報道に対しての対応の仕方がお粗末・・というか、上手く答えられない関係者が多いのがとても引っかかる部分です。上がこうだと、下はもっと対応しにくくなってしまうもの。それがこのテーマに繋がっているようにさえ感じます。

 苦情を恐れないでほしい

話は戻って、次は実況解説ではないスタジオに呼ばれる解説者について。彼らは少なくても実況組よりは、語る内容を整理できているわけなので、その分、解説には期待がかかりますし、一般層にとっては重要な情報源です。しかし、ここでも視聴者やファンが「本当に知りたい内容」というのは、ほぼ聞くことができません。聞こえてくるのは、元から用意されたテーマを進行通りに行っているだけの言葉。語られるのはいつも同じで詳細が不十分、そんなもどかしさがあります。

番組がGOEについて話を誘導すれば、勝敗の原因がPCSだったとしても、なぜかGOEが標的になったり・・。PCSの説明においても、なぜかPCS=スピードと表情に固定されている疑問だったり・・。どこか本音では踏み込めていない空気を感じてしまいます。

私が見ていて思うのは、国内でフィギュアスケート人気が沸いてから、報道量が増えた分、それらへの苦情というのも同じくらい増えているのではないか、ということです。フィギュアスケートは各選手のファンの熱意が凄く、どうしても贔屓の選手には保護者心が出てしまう傾向にあります。その批判を恐れてか、どの解説者も具体的なことは避け、曖昧な言い回しになっていると思います。

しかし、私たちが本当に知りたいのは「なぜ?」の部分。なぜ、ミスしたの?なぜ、この得点になったの?どこが課題で、どこが強みなの?こんな単純なことなんです。ぜひ、元選手目線でしか語れない思いを率直に教えてほしい、周囲にしか見えてこない選手の姿を、もっともっと伝えてほしい、そう思います。

伝える力①

ピョンチャンオリンピックで各競技の解説を聞いていて分かりやすいなぁ、と思ったのは清水宏保さんによるスピードスケートの説明です。素人が見ていても気づかない、分からないことでも、瞬時に見抜き、それを言葉で的確に伝えることが出来る、とても分かりやすい解説でした。

解説で元選手が呼ばれるのには、こうした選手目線でしか語れない内容を世間に発信するため、また、それが期待されているからだと思います。その中でも金メダリストである清水さんの解説には、一流の洞察力と説得力があり、それを聞いていた者にも選手に対するリスペクトや、競技への理解というというものが自然と伝わったのではないでしょうか。まさに理想的な解説です。この伝える力の上手さというのは、どうやって身につくのか・・。もちろんスピードスケートは採点競技と違い、タイムで結果がはっきりしており、こちらにも目で見て分かりやすいという点も相まってはいますが、事実をありのままに、的確に、愛情を持って伝えるというこの3点セット技は、とても心地よく、フィギュアスケートでも聞けたらいいな、と羨ましく感じる解説でした。(フィギュアでもそれはあるんですが、バランスがちょっとどれかに偏る傾向にありますよね)

伝える力②

フィギュアスケートの解説ってこれでいいの?と、ここまで4000字に辺りごちゃごちゃ言わせてもらいましたが、そんなフィギュアチームも、テレビで口から発信する時こそ消化不良気味で終わってしまいますが、それがコラムやインタビュー記事などで文章になると、皆さん饒舌で読み応えたっぷりなんですよね。

こういうのをテレビで世間に伝えてほしいよ~~!!と思ってしまうくらいです。やはりテレビではとっさに応えなければならないし、頭で色々と考えたり、気遣ったりで、自由に伝えられないというのも大きく影響しているんでしょうね。それでも、個人的にはテレビでの解説より、文章での皆さんの解説の方が好き。フィギュアスケーターはバリバリの体育会系というよりは、ややアーティストよりだから、じっくり内側から語る方が性に合っているのかもしれませんね。決して伝える力がないのではなく、伝えるタイプが違うだけ。ただ、それが実況解説や、ワイドショーなどの面でも発揮されると、とってもとっても良いんだけどなぁぁ。

採点競技の奥が分かる記事

そこで、一度、上記で書いた「読み応えのある解説記事」を紹介したいと思います。(元選手以外のスポーツライターの記事も含む)

 

まずはこちら↓

pyeongchang.yahoo.co.jp

解説では仕事がこない・・と言われる、何かと批判されがちな安藤美姫さんの解説記事。ここでは女子フリーの勝敗を分けたものが詳しく書かれています。特に、私が周囲から受けた質問にもあったメドベージェワ選手とザギトワ選手の差については、

 

優勝したザギトワ選手と2位のメドベージェワ選手の差はほとんどないのですが、強いて挙げるとすれば、ザギトワ選手のジャンプがすべて後半だったということです。ザギトワ選手は自分の弱みを分かっている構成で、それに加えてシーズンを通して5コンポーネンツを上げてきました。この何カ月ですごく成長した部分だと思います。


 一方のメドベージェワ選手は、少し緊張が感じられました。普段はもっとリラックスして演技をしているのですが、今回は慎重に落ち着いてやっていたように見えました。ただ、2選手とも素晴らしい演技で、この僅差に関してはプログラム構成だけだったと思います。

 

と、明確な理由と、どちらの選手にも配慮のある言葉で語られています。また、オズモンド選手と宮原選手の勝敗についても、あれだけ言われていたGOEの差はジャンプ部分でのわずかでしかありませんでしたが、フリーではそのわずかな差が影響してしまうことや、今後PCSの評価がもっと上がれば差が縮まること等が書いてあります。安藤さんはツイッターでもセルフ実況をしたりと、自由な解説をしている方で、テレビで語るよりは文章で伝えるほうが、上手い印象を受けます。

 

続いてはこちら↓

www.yomiuri.co.jp

面白い記事だったので、解説とは少し違いますが載せておきます。一体どういうものかというと、ピョンチャンオリンピックで羽生選手と宮原選手が滑ったプログラムの演技をデータ化したものなんですが、こうして数値化すると、人間の目だけでは測れない、この競技の見方が知れて非常に興味深いです。読売新聞では他にも、宮原選手のフリーの運動量をザギトワ選手と比較した結果、宮原選手の軌跡が934mだったのに対し、ザギトワ選手が783mだったこと、また、宮原選手の平均速度は男子の羽生選手に匹敵するものであったことなどを分析しています。

 

リンクばかりを貼るのも読みづらくなってしまうので、その他を紹介しますと、元・シングルスケーターの高橋大輔さんのコラムや町田樹さんの解説、長年フィギュアスケートを担当しているライターさんの記事などは、普段聞けない情報が分かりやすく得ることが出来て興味深いです。

元選手と現選手の仲睦まじいインタビューでの様子を見るのも楽しいですが、それがあまりにもバラエティ寄りになってしまっては、選手がタレント扱いになってしまいますし、聞きたい内容が流れてしまい、違和感が生じてしまいます。

逆に元選手だからこそ察してあげられる、理解してあげられるようなインタビューのやり取りは見ていてとても気持ちが良いですし、「そういうことなんだ」と頷くような情報も知れて勉強になります。

個人的には、テレビ用にと忖度を誘わなくてもいいので、選手の気持ちがストレートに分かる、ひとつ突っ込んだ真面目なやり取りを希望しています!少なくてもこうした記事では、受け狙いを気にせず、どんな結果にも愛情で評価されていて素晴らしいなと思います。

おわりに

以上が、「こうなったら多くの方にフィギュアスケートを理解してもらえるのではないか」に、ついてでした。採点競技は絶対に、勝ち負けの理由が伝われば、今よりも関心を持ってもらえると思うんです。

 

これは世界的にもそうですが、分かりやすさが伝わることで、人気を少しでも回復できればいいな、と密かに願っています。と、いってもこれは競技人気復活へのひとつとして、勝手に考えた例にしかすぎなく、今回はあくまでも第一弾として「解説」に焦点を当て話を進めましたが、他にもここがこうなったら良いのではないか?という例はたくさんあります。そこについては第二弾でお話させていただきます。(長いので)

 

少し批判めいたことを書いたので、心苦しい気持ちはありますが、(解説陣の皆様ごめんなさい)今のフィギュアスケート人気の維持と、世間からの関心、そして海外での人気低迷(特に男子シングルやペア人材の減少は危険)などを考えると、決して安心して見ていられるものではないのかな、と感じるのです。

 

国内人気を見ていても、自分の好きな選手が引退したら他は興味ないよーって方も過去を見る限り多いと思うので・・。

 

私は日本人スケーターも海外スケーターも一通り好きで、元は引退したスケーターたちの大ファンであるので、スケーター自体に不満なんてありませんし、そんなことを頑張っている方たちに言いたくもありませんが、世界的に競技人気が危うい現在、ルールや運営システムについては全部が全部、納得いくよ!それでいいよ!であっては、今後ますます苦しい状況となっていくのではないかと思い、ここだけは違うのではないかい?ということを書かせていただきました。

 

やはりいくらルールがこうだから!と、言っても、それが結果、ファン離れを加速させているのなら、対策は必要ですよね。(それだけ女子のジャンプ判定は分かりにくいです)そのためにも!フィギュアスケートが再び、冬季オリンピックの花形種目と言われ、どの会場でも満席になるように、そして男子シングルが世に受け入れられる、憧れの競技へと変わっていってほしいです。

 

 

 おまけ

某スポーツ番組で、現地(韓国)にいる高橋大輔氏にスタジオ(日本)にいるコメンテーター(どなたか忘れた)がスケーターたちについて質問した時に「キレイごとなしに言ってください!」と何回も聞いていたのを見て、驚いたのと同時に「あ、やっぱフィギュアスケート陣って無難なことしか言わない人たち」ってイメージが強いのかなと、思いました。んん~そうじゃないんだけど、否定もできないこの感じ。このモヤモヤはしばらく続きそうです。

 

追記:ここ最近の織田くんの解説がかなり具体的でファンにも分かりやすいです!どのスケーターにも敬意と愛情を込めて発信されているので、面倒なアンチもつかないと思う!このままガンガンいってほしいです! 2018.12

五輪を逃した者の今【樋口新葉】

チャレンジカップ2018

 

2018年2月22日からオランダ・ハーグにて開幕されたチャレンジカップ

 

この大会には日本から五輪代表選考会で涙を流した樋口新葉本田真凜本郷理華選手が出場しました。

 

世間が五輪ムードで賑わう中、ひっそりと行われたこの大会。

 

選手たちは、それぞれ、一体どのような心境で、このリンクに立ったのでしょうか。

 

今回は、その中でも、最も五輪代表に近いと言われながら、惜しくも平昌への切符を逃してしまった樋口新葉選手の現在に迫りたいと思います。

 

007が見れないストレス

全日本後、樋口選手のスケートを観る機会がなく、恋しい想いをしていたファンはとても多かったことでしょう。特に、フリーのプログラム「映画007より スカイフォール」を見れないストレスは、私の中で一種の禁断症状に近かったといっても過言ではありません。いや、私の知る限りでも、五輪で男子シングルのチャ・ジュンファン選手がジプシーダンスを滑っているのを観て、「樋口選手のショートを思い出した!」「新葉の演技がみたくなった!」という声がそこら中で呟かれていた様子からも、この気持ちは私だけではなかったのだと思います。

 

それだけ愛された樋口新葉と、ふたつの名プログラム。

しばらくの間、樋口選手の動きが分からぬまま迎えた、このチャレンジカップ

もちろん、観客もいつものように大勢は入らない小さな大会。

悔しさと悲しさを抱えた中、仲間たちが夢の舞台で活躍している中、樋口選手は、どのようなモチベーションで、ふたつの”五輪用”プログラムを演じたのでしょうか。

 

やはり輝いていた

結論から言います。ショート・フリー合わせて観ても、やはりこのふたつのプログラムは輝いていました。”まさしく五輪用プログラムだった”これにつきます。あまりプログラムを絶賛すると、「ただ、プログラムが良いだけなのでは?」と、言われそうなので、きちんと付け加えさせていただきますと、こういうプログラムを与えられる能力と、それを滑りこなせる能力が凄いと言うことです。日本人選手の中でも、16~17歳の中でも、ここまで年相応の大人っぽい演技が堂々と出来るというのは、樋口選手だけの強みです。決して背伸びをしたわけでもなく、幼さを残したわけでもない、等身大のスケーターがそこにありました。

 

ジャッジが期待している表現力を持つ樋口選手ですが、それでも代表まであと一歩届かなかったと言われる理由としてあげられているのが「メンタル面と安定感」です。今大会でも、フリーでひとつ転倒があったのですが、そこについては、以下にショート・フリーの感想を含めて書いていきたいと思います。

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不器用なだけ

私は樋口選手を不器用な選手だな、と感じています。ケガや構成面での苦労などを何かと「メンタルが問題だ!」と誤解されることが多い選手。確かに真面目な選手だけに、大舞台では少し緊張屋さんなところはありますが、今季は比較的安定していた中でも、たった一度のミスで「必ずミスる」というレッテルをはられている少し気の毒な空気があります。

 

例えばフリーのサルコウジャンプは全日本でミスがあったため「苦手なジャンプ」「ミスるジャンプ」と言われがちですが、あれは今までと踏み切りの仕方を変えたから起こってしまった現象で、メンタルはあまり関係ないというか、どちらかというとミスの理由がはっきりしている技術的なことなんですよね。おそらく演技中はジャンプの踏切りの際のタイミング的な面で難しさがあると思うんです。それもあってか、今大会ではサルコウを跳ぶ順番を冒頭に変えて修正してきました(GOE1.40)!以前はアクセルを置いていた部分ですが、あそこは元々ジャンプまでに、たっぷりタイミングをとれるようになっていたので、そこにサルコウを持っていったのは良い作戦ではないかと思います!こんな風に工夫しながら現在も頑張っている樋口選手の努力。私は多くの方に知ってほしいです。

 

やや渋めな点数

ショートは完璧な演技!・・にも関わらず、PCSがかなり辛辣というか・・30点台出すのさえ渋っていた感炸裂でしたが、樋口選手なら「大会によってジャッジの傾向は違うから」と落ち込まずにいてくれることを願います。今更7点台のオンパレードはちょっとね~・・(世界選手権前にテンション下がる採点は勘弁してくれよん)と、思ったらフリーは突然8点台~9点台に戻り(ひとりだけまだ7点台)一安心な結果に。何かよく分かりませんが、転倒あり、渋め採点でも一応200点台に乗ったので、評価されているということにします!

 

ちなみにフリーのGOE(3S以外)
134.69 TES 69.48 PCS 66.21 

3Lz+3T 1.23
CCoSp4  1.00
ChSq1  1.75
2A  1.00
3Lz+3T  x -2.10
3Lo  x 1.05
2A+2T+2Lo  x 0.50
3F e  x -0.53 
FCSp4  0.50 
StSq4  1.58
LSp4  0.75

 

赤はGOE+、青は-です。フリップでeをとられたのは痛かったなぁと思うのですが、ここについては以前別記事で書いたので省略します↓

 

goldenretrievers.hatenablog.com

 

それ以外では良い感じの評価ではないでしょうか。コレオシークエンスのGOE1.75点やステップの1.58点は五輪組と比較しても高い加点です。できればスピンでもっと稼げると最強なんですが、来季は何かいい方法はないかなというところ。転倒は思わぬミスでしたが、まぁここでピークを持っていっても仕方ないので、現時点ではそんな問題ではないかな?ただただエッジエラーだけが怖い・・。

 

順序がめちゃくちゃですが、ショートの方は69.25点(TES38.35 PCS30.90)でフリップもエラーなしで加点つき!しかし、ステップがレベル3になってしまいました。そうなんです。フリップはノーマークだったり、!だったり、eだったりと調子によってバラバラ・・。気まぐれ屋さんです。それでも重度なわけではないので、現在の女子シングル鬼の戦力図を見る限り、跳べる限りは修正しつつ跳んでいく方が今後にとってもベターな気がします。うん、頑張ってほしい。ステップの方はフリーでレベル4をとり、加点も高くつきました!

 

北京へと進んでいる

と、言うように、樋口選手はミスを最小限に抑え、見事1位で大会を終えました。衣裳もショート・フリー共に新しくなっていて、構成の変更もそうですが、今でも尚、最後まで諦めずに、このふたつのプログラムを少しでも成長させようと努力している姿が健気で応援したくなりました。(個人的にショートは前のオレンジ色が誰とも被っていないカラーで好き)

 樋口選手は五輪に行くことは出来ませんでしたが、それでも点数や順位的には、まだまだ世界のトップ6の中に位置しているということが、五輪やこの大会で確認できました。次は世界選手権。既に五輪メダリストたちが出場を口にしており、厳しい戦いが予想され、五輪でミスした選手たちもここでは調子を上げてくるかもしれません。五輪で評価を得て自信を持った選手と、表彰台のチャンスを逃したからこそ奮起してくる選手。緊張や疲労からコストナー選手やソツコワ選手が調子を戻せば、日本勢にとってはより難しい展開になります。とても難しい枠争いが待っている中で、試さるように派遣される樋口選手。どうか報われてほしいし、フィギュアスケートをファンとしてサポートする側もこの現状を理解して考えてあげてほしいです。

 

樋口新葉は諦めていないどころか、必死に前へと進んでいます。

五輪に落選した選手には、私たちの想像以上に辛い道のり(心境)があるはずです。

それは、もちろん樋口選手だけでなく、三原選手にも、本郷選手にも、本田選手にも・・。

このトンネルは北京まで続くでしょう。本来なら五輪に落選し、世界選手権に出場するというまでのモチベーションを短期間で固めるのさえ、とても残酷な課題だと思います。

それでも、笑顔で頑張っている。後ろを振り返らずにいる。

 

どうか、そんな樋口選手が世界選手権で今季一番の力を発揮できますように。

 

祈っています。

 

おわりに

以上でチャレンジカップの感想は終わりになります。今大会では、樋口選手の他に本郷選手や本田選手も出場したわけですが、個人的に本田選手の様子がかなり気になってしまいましたね。本田選手も樋口選手同様に、まだ癒えていない傷こそあるとは思いますが、今季のはじめから不安視していたジャンプの不調が悪化しているように見えました。さすがに身長が急激に伸びたのも影響している気がしますが、この闇の中をいかにして乗り越えるかは、本田選手にしか出来ません。やはりこのまま埋もれてしまってはもったいない選手、何としてでも返り咲いてほしいです。

 

 また、三原選手についてですが、彼女も3月16日にルクセンブルクで開催されるクープドプランタンに坂本選手と白岩選手と共に出場します。(坂本選手のスタミナ元気すぎ!)三原選手に関しては、同門の坂本選手の注目とパワーに引っ張られて、(ややセット売りになっている)良い風を受けているように見えるので、たくさん吸収して力にしていってほしいですね。(それでも三原選手は今後、坂本選手との戦いが大変になってくると思う。マスコミはそこら辺の距離感には慎重に取材してほしい)

 

まとめると、どの選手にも自信を持って挑んで!!!と、エールを送りたい!!

周りの声やリアクションなんて気にしなくていい!!

自分を貫いていくんだ!!!

ファンはずっと頑張っているその姿を見ているから、堂々と滑ってきてください。

きっと、その努力は多くの人に伝わるはず。

頑張れ。

 

おわり

【感動のフリー】メドベージェワが、宮原が、氷上の天使たちが平昌で舞う

2018年ピョンチャンオリンピック

 

女子シングル総合結果

 

1 ZAGITOVA Alina OAR 239.57

2 MEDVEDEVA Evgenia OAR 238.26

3 OSMOND Kaetlyn CAN 231.02

4 MIYAHARA Satoko JPN 222.38

5 KOSTNER Carolina ITA 212.44

6 SAKAMOTO Kaori JPN 209.71

7 CHOI Dabin KOR 199.26

8 SOTSKOVA Maria OAR 198.10

9 TENNELL Bradie USA 192.35

10 NAGASU Mirai USA 186.54

11 CHEN Karen USA 185.65

12 TURSYNBAEVA Elizabet KAZ 177.12

13 KIM Hanul KOR 175.71

14 RAJICOVA Nicole SVK 175.19

15 DALEMAN Gabrielle CAN 172.46

 

以下省略→Olympic Winter Games PyeongChang 2018 - Ladies Single Skating

 

 

2017/2018シーズンの最も激しく儚いメドベージェワVSザギトワの戦いは、激闘の末、ザギトワ選手の勝利で幕を下ろしました。

 

納得の順位

1位のザギトワ選手はショートで82.92点のハイスコアと合わせて歴代最高点を更新、フリーでも圧巻のノーミス演技でオリンピック初出場・初優勝を飾りました。ちなみに、この金メダルはOARにとっても第一号であり、15歳と281日での優勝は史上2番目の若さでもありました。2位のメドベージェワ選手はショートで81.61点、フリーではなんとザギトワ選手と同点の156.65点という結果を受け、惜しくも僅か1.31点差で銀メダルとなりました。しかし、ケガの影響からか、本来の滑りとは言えない中、今できることを精一杯やれた演技には今大会一番の拍手を送りたいです。3位のオズモンド選手は、何かと大舞台でショート・フリーを揃えることが出来ないという課題がありましたが、ここにきて生涯の中でもトップ3に入るほどの見事な演技で銅メダルを手にしました。そして日本の宮原知子選手は、ショート・フリー合わせて自己最高記録を更新し、日本女子歴代最高得点の222.38点で4位、同じく日本の坂本花織選手もフリーでは小さなミスこそありましたが、最終グループの緊張感に負けない堂々とした演技で6位に輝き、日本勢はふたりとも入賞を果たす結果となりました。イタリアのベテラン、コストナー選手は団体戦での疲れもあり、ソチに続く表彰台には届きませんでしたが、誰よりもスケートを愛する喜びを表現し、5位に食い込むことが出来ました。

 

こうしてみると、最終グループのTOP6のメンバーは露②日②伊加で、順位と人は違えどグランプリファイナルと同じになっていましたね。私は日本人選手が、「勝てない」と言われる中でも、必ず上位に名を連ねてくる今シーズンの強さには称賛しかありません。本当によく頑張ってくれたと思います。宮原選手、坂本選手、お疲れ様!日の丸を背負った緊張の中、素敵な演技をありがとうございました!

 

そして、表彰台に上がったメンバーは全員、納得のいく滑りと、結果だったと思います。おそらくこの順位に不満がある人は少ないのではないでしょうか。それくらいギリギリのところまでお互い力を出し合い、切磋琢磨した大会でした。

 

ショート:魔物に勝てたもの

大会中、日本ではやたら「魔物はいましたか」「魔物に勝てましたか」と、魔物に関する質問をするマスコミで溢れかえっていました。これにはある意味、本番前からマスコミが魔物を「無理に作っているんじゃないか?煽っていないか?」と少々疑問に思うところでもありましたが、実際にショートで選手の明暗を分けたのは、この魔物(緊張感)に打ち勝つかどうかだったと思います。ショートでは各グループの第一滑走者がミスを連ねる中、同じく第4グループで1番滑走だった坂本選手のことを思うと、「6分間練習の雰囲気から急にプログラムを迎える緊張感に飲み込まれてしまわないだろうか」と心配でしたが、そんな不安はどこかに吹き飛ばしてしまうほどのパワー溢れる情熱的な滑りでお見事でした。坂本選手のなにが他の滑走者と違ったのかといえば、この「張り詰めた空気に負けない集中力」といっていいかもしれません。初めは、後半にジャンプを詰め込む坂本選手の構成は、身につくまで苦労がありましたが、一度味方につけると、オリンピックのような極度の緊張を強いられる場面では、前半にいきなりジャンプが入らない分、呼吸を整え、独特な雰囲気から一度落ち着き、身体をならすことができるメリットがあったのではないかと思います。ここにきて、「月光」が魔物に打ち勝つ効果を最大限に発揮してくれた。まさにこの点こそがオリンピックのためのプログラムとして用意された魔力だったのかと、驚かされました。また、回転不足が不安視されていた宮原選手も「よくやった」という会心の出来でしたが、ミスパーフェクトと言われるあの宮原選手でさえ、ショートの前は今にも泣き出しそうな顔をしていました。私はもう何年も宮原選手を見てきましたが、あんなにも追い詰められている彼女の表情を見たことがありません。おそらくこれが最初で最後。ケガから復帰した時でさえあんな顔を見せたことはなかった。これがオリンピックなのか・・。それでも課題を克服し、最高の滑りを魅せてくれた宮原選手を改めて好きになりました。

 

フリー:ベストを尽くせたもの

ショートが緊張に打ち勝てたものに与えられるステージだとすれば、フリーはベストを尽くせたもののためにあると感じました。それくらい上位3選手と宮原選手の力の出し方には、女子シングル最強といえる精神ゲームの世界であったと言えます。もはや、ミスなどしないことが前提で、あとはどれだけ今までの自分の力を超えるものを発揮できるか。残念ながらメドベージェワ選手にとっては技術的にベストな状態ではなかったかもしれませんが、ザギトワ選手、オズモンド選手、そして宮原選手のフリーからは彼女たちが彼女たちではないような、そんな気迫を感じました。それくらいこれ以上にない力を出し切ったと思います。いつもミスする選手がミスをしないのがオリンピック。だからこそオリンピックではオズモンド選手には警戒しないといけないし、常に自身もベストをキープし、少しでも彼女に追いつけるようにしなければいけない。結果を見れば、オズモンド選手と日本女子の差はまだまだありますが、彼女たちは最後の最後までライバル選手をリスペクトしていたからこそ、良い演技が出来たのだと思います。ショート後に「オズモンドはノーミスできないから日本にチャンスがある」と声高にしていたマスコミは本当に恥ずかしい。日本勢は、全選手が力を発揮してくると思っていたからこそ、自分の滑りが出来たのです。自分に勝てた、それが日本女子の強さなのです。

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美しきライバル

ピョンチャンオリンピックではスピードスケート女子500Mで金メダルを獲得した日本の小平奈緒選手と銀メダルを獲得した韓国のイ・サンファ選手の美しきスポーツマンシップが話題になりましたが、ここフィギュアスケートでもメドベージェワ選手とザギトワ選手の美しきライバル対決に涙したファンも少なくありません。彼女たちは出身国が同じというだけでなく、コーチも同じという同郷・同門対決。このふたりに「対決」などという安っぽい言葉は相応しくないかもしれませんが、正確な表現が見つからないというのが本音。もしあるとしたらそれは新たに作られた日本語であるだろうと言わんばかりの重く、美しい戦いでした。シーズン序盤、プログラム変更をしたり何かと慌ただしい動きを見せていたメドベージェワ選手は、その裏で足の負傷と体の成長に悩まされていました。私たちからすれば細すぎるくらいに見えるその体も、関係者からはダイエットを指摘されるほどの過酷な生活。そしてプレッシャー。ロシアのドーピング問題ではシーズン中であるのにも関わらず、演説に駆り出され、その間どんどん飛躍していく後輩を見ていてどんな気持ちだったのでしょう。それでも大会後メドベージェワ選手はこう言いました。「【もし】は【もし】でしかない」「私は今この時を生きている。過去を振り返りたくはない。」ケガがなければ、あの時こうしていれば・・・そんなことは今日の結果には関係ないと、私は自分の力を出し切ったのだと、そう答えたのです。フリー演技後に見せた涙と得点発表後の涙には、メドベージェワの口から直接語られなくても、それらすべての思いが伝わってきました。あの時のエテリコーチの何とも言えない表情、そして優勝したザギトワ選手が悲しそうに、達成感に満ち溢れた目でぬいぐるみを見つめていた姿には心が震えました。キスアンドクライで一瞬涙したものの、コーチから何か言われ、パッと笑顔で観客に応えたメドベージェワ選手にはアスリートとしてのプロ根性を感じました。

 

ザギトワ選手も自身の今は、メドベージェワ選手が常に良いお手本となり、そばにいてくれたからだと言っています。このお互いを尊敬しあう素晴らしいメダリストの関係にはオリンピックメダリストという結果だけでなく、その競技に対する努力、愛情、すべてにおいて私たちはとてつもなくハイレベルなものを見せつけられているのだなと実感した大会でありました。

 

次の4年まで・・

長かったようで短かった4年間。たった1シーズンでここまで勢力図が変わるのも珍しいのではないかというくらい慌ただしい4年間でした。以下に、各選手の感想を書いていきたいと思います。

 

ザギトワ

その成長スピードには誰もついていくことが出来ませんでした。オリンピックでのジャンプはすべてにセカンドトリプルが付けられるのではないかというくらい上質な出来で、新潟にいるときからもザギトワ選手の調子が凄くなっていると聞いていたので、これは金メダル一直線だな、と思っていたら本当にその通りになりました。ショートのコレオシークエンスには今までに見えなかったザギトワ選手の感情が伝わってきました。結果、後半ジャンプ作戦は成功でしたね!おめでとう!できれば、長く選手を続けてほしいです。

 

メドベージェワ

ショートでミスがなければ、まだ少しはザギトワ選手からリードできる点を与えられるのではないかと予測していましたが、新潟合宿の時からややジャンプに不安があったようなので、心配して本番を見守っていました。しかし、以前より筋力が落ちた細い脚からはいつものスピード感や流れが感じられず、ショートでトップに立つことはできませんでした。得点が出た時エテリコーチも一瞬驚いた顔をしていましたね。それでもメドベージェワ選手は自分の状態を自身が一番分かっていたからでしょう。この結果にも動揺することなく、フリーではやるべきことをしっかり出し切りました。確かにメドベージェワ選手のジャンプは天才型というよりは努力の賜物なんだと思います。今後そのジャンプがどこまで維持できるかは、本人の努力だけでは難しい部分もでてくるかもしれませんが、将来的にはコストナーのような芸術面で愛される選手になってほしいです。

 

オズモンド

ブラックスワン。完成するとあんなに凄いプログラムになるのか、と、いうほどオズモンド選手から気迫を感じました。絶対に負けたくないと思って滑ってましたよね。それくらいの強い意志、まなざしでした。なにより脅威に感じたのは、そのプログラム構成。オズモンド選手が緊張で乱れやすくなりやすい箇所に必ず、一度心を落ち着かせるための「休みどころ」があるんですよね。あそこには完全にやられた~、とその戦略力にひれ伏しましたよ。今までミスが多かったので、そういう意味だと気づきませんでした(ごめんなさい)それにしてもさ、オズモンドさん、最後さとこちゃんとなぜハグしなかったんだい?気づいてなさそうでしたが、ザギトワとしたならさとこちゃんともしようよ~。あの場面はメダリストの方からいってほしかったな。(もしや日本勢はライバルと認識されてなかった?!)ぜひ、次はハグしとくれ。銅メダルおめでとう!

 

宮原

オリンピックに間に合ってくれて良かった!自己ベストを更新してくれて良かった!もうそれだけ!さっとんにはそれだけだ!!ありがとう!!この4年間日本のエースでいてくれてありがとう!!ショートでメドベージェワ選手の後、リンクを瞬時に桜色に染めたサトコの表現力は凄いんだぞ~!

 

コストナー

一番力を出し切りたかったであろうオリンピックで、一番実力を出すことができなかったんじゃないかな。試合数を見れば、それは当然どこかで疲労感が出ちゃうよね・・と同情してしまいますが、コストナー選手自身は年齢のことなんて関係ない!ときっぱり言っているので、自分らしい演技が出来たんだろうなと思うことにします!ずっと笑顔で滑っていましたしね。もうあの域に到達すると競技に対する見え方も違ってくるんだろうなぁ。さとこちゃんを気遣ってくれたり、フィギュア界の母みたいな存在ですね。

 

坂本

ショートが進化していてびっくり。坂本選手は表現面においても化けるかもしれないと初めて思いました。おそらく今シーズン、坂本選手は、オリンピックを目指していた気持ちはあっても実際に行くとは思っていなかったのではないかなと思います。もし、坂本選手の調子がもう少し早く上がれば、あの対応力の早さを見ると、フリーもオリンピック使用のものを用意できたかもしれませんね。来シーズンは、ぜひともお似合いのプログラムで挑んできてほしい!

 

ダビン

まさかソツコワ選手の上に来るとは想像していませんでしたが、まぁ地元ですしね。そこら辺は▽〇☐★・・・。それでも韓国の選手は、あの応援団の圧力にも負けず、力を出し切っている選手が多いのは素直に凄いことだと思います。良い演技が出来て良かったね!

 

ソツコワ

少し人より早めにピークが来ちゃったかな?という感じ。そんな中でもPCSの方では今シーズン評価をのばしてこれたし、集中力も同じくらいのびているところは今後にとってプラスしかないんじゃないかな。この選手は失敗を経験した後が強い伸びしろガールなので、また次に向けて頑張ってほしいです。

 

テネル

滑走順が違っていたら、もう少し違う未来があったかもしれませんが、これも実力のうち。過ぎたことは仕方ないので、USAパワーで前向きに、世界選手権でリベンジしてほしいです。

 

ミライ

3Aは恐怖でしかない存在なんだな、と改めて認識。この技を操るのは勝負の場では困難だと皆さんが思ったことでしょう。しかしナガス選手が(おそらく最後の)オリンピックで何を目指していたかを、現実的に考えたら、強豪ロシアが立ちはだかる表彰台よりも、今できるすべてのことを出し切ることを選んだのだろうなぁと思います。そういう意味では団体戦であの演技ができたことは本当に良かった。一度でもチャンスを生かせる場があって良かったなと、個人戦後しんみりしました。

 

デールマン

一体何がデールマン選手をあそこまで怖がらせてしまったのでしょう。ひたすら見ているのが辛い時間でした。私にはこの苦しみが晴れる日を願うことしかできません。

 

フィギュアスケートが進む道

最後に、オリンピックを観て、「そう、そう、こういうことが違和感だったの!」という気持ちを代弁してくれる記事があったので載せておきます。まだ読んでいないという方はぜひご覧になってください。

 

 

number.bunshun.jp

 

タイトルの通りプロのダンサーたちに、芸術目線で女子の評価をしてもらったという内容なんですが、多少日本人にリップサービスはあるだろうとは思いつつも、読んでいると、同意できる点がありすぎて・・。確かにフィギュアスケートにおいてジャッジが注視している部分というのは、これらの意見とは違うものだと理解していますが、技術点的にも演技点的のも限界が見えてきそうな今、一度、評価の仕方についても色々なやり方を参考にしてみていってほしいな、と思いました。

 

このままだと、北京までのトップ選手は全員後半ジャンプになって、全要素同じところに組み込むプログラムが大量発生してしまいかねません。だって、ルールがそうである限り、点が出るなら挑んできて当たり前ですよね。そうなると曲も後半に盛り上がるものが流行るでしょうし、つなぎで忙しいますます謎の表現力の集大成になってしまいます。今回正統派プログラムで滑ったオズモンド選手でも3位が限界なのは、この時代のルールが物語っています。

 

決してロシアの選手を批判しているのではなく、ザギトワ選手にあんな忙しそうな振付を与えなくても、勝てるような評価方法にしてほしいということ。もう少しひとつの動きを長く余韻を残せるくらい余裕を持たせる演技でも、十分な評価を与えてあげられるようなルールであってほしいです。若い選手がベテランに勝つには、誰よりも過酷な構成で挑まなければいけない。ザギトワ選手のような若い選手の本当の良さを評価する項目がないなんておかしい・・。過剰なTRはやる方も見ている方も疲れるだけ。もっと選手ひとりひとりの個性を一番にしたスケートが見たいです。できればジャンプは前半に何本、後半に何本と規定、タノも回数制限でここぞ!という場面で曲に合わせる、女子はスパイラルの復活くらいあるといい。1.1倍をとことん使いたい選手は後半にコンビネーションジャンプを持ってくればいい。なんなら演技終了ギリギリで跳んだジャンプにはプラスしてあげるのもいい。(もちろん演技終了まで〇秒以内の間とかきめて)ステップのレベル判定は厳格化し、5段階評価かGOE幅を広くするだけでも、かなりバラつきがでるんじゃないかな。

 

選手は技術面でやることが多すぎて、かなり体力的に消耗しているように思えます。ここで一度、演技面とバランスをとるためにも、技術面がハードになりすぎないでほしいなと思います。上のようになってもロシアなら余裕で勝てると思いますしね。私はザギトワ選手やメドベージェワ選手をできるだけ長く見たい。だからこそ綺麗ごとなしで言いました。

 

日本勢にとってPCSは欧米の選手と比べると辛いものがありますが、彼らの持つ文化と日本独特の文化を見ると、パフォーマンスの面で日本は控えめに映ってしまうのは自然といったら自然。それでも、表現というものは内側から生まれるものには変わりありません。あとは、その内なる情熱をいかにして外側に表現するか。内側の引き出しなら日本勢の方がたくさんもっているはず!技術と表現の二刀流でそれを酔いしれるくらいの勢いで出していってほしいです!頑張れ日本女子!

 

最後に、長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。

 

おまけ:私、何気にここで適当に書いたオズモンド評が当たっていました・・。でも嬉しい誤算は、宮原・オズモンドのオリンピックでのショート・フリーのTES差が共に約1点しかなかったところ!さっとん、最後までGOEの壁と戦ったんだね・・涙涙

goldenretrievers.hatenablog.com

 

 

おわり

【五輪銀】神様は宇野昌磨の努力を見ていた

2018年平昌五輪

 

ピョンチャンオリンピック男子シングルの競技がすべて終了しました。

その結果はなんと日本のワンツーフィニッシュ!!!

羽生結弦選手がソチに続いて二度目の金メダル、そしてオリンピック初出場の宇野昌磨選手が見事銀メダルという快挙を成し遂げました!!

 

いやぁ~もう日本男子は立派です!!一時期はどうなることかと不安でしたが、それでもこのふたりには最期までお互いしか敵はいなかった、そう思います!!

 

本当に本当におめでとう!!!そしてお疲れ様です。

 

日本に、世界に、フィギュアスケートを愛するすべてのファンに夢と感動をありがとう!!!

 

ピョンチャンでのこの出来事を、私は一生忘れることはないでしょう。

 

オリンピックで君が代を流してくれて嬉しかった。この勢いで、他競技にも良い風が吹いてほしいな。代表選手の皆さんには敬意しかありませんね。

 

さて、世間ではフィギュアスケート男子シングル史上66年ぶりの二連覇ということもあり、さっそく羽生フィーバーで盛り上がっていますが、今回ここではその羽生祭りの後ろに隠れつつある宇野選手について、男子シングルの感想を含め、語りたいと思います!(羽生選手のことは、他メディアやブログ等で愛情たっぷりに日本から海外まで幅広く言及されていますので、既に私が付け加えて言いたいことはありません!ただ一言、強いぞ!おめでとう!の気持ちだけ送りたいです)

 

 

総合結果

1 HANYU Yuzuru JPN 317.85
2 UNO Shoma JPN 306.90
3 FERNANDEZ Javier ESP 305.24 
4 JIN Boyang CHN 297.77
5 CHEN Nathan USA 297.35
6 ZHOU Vincent USA 276.69 
7 ALIEV Dmitri OAR 267.51
8 KOLYADA Mikhail OAR 264.25  

 

金メダルに一番近い男

オリンピックシーズン。金メダルに一番近い男は誰か。その答えはいつも絶対王者羽生結弦でした。時代は真・四回転時代。アメリカのネイサン・チェン選手、中国のボーヤン・ジン選手を筆頭に、今まで試合では成功させるのが難しいとされてきた数種類の四回転をショート・フリー合わせて何度も跳んでくるという厳しい戦いが始まった中、追われる立場の羽生選手はそれに負けじと、常に高難度ジャンプ構成に挑んできました。しかし、その結果、試合では思うような演技が出来ずスコアは低迷、身体にも負担が重なり、ついにはグランプリシリーズの最中に靭帯を痛めるケガを負うことに・・それ以降オリンピック本番まで競技から離脱する結果となりました。

 

なにが今シーズン羽生選手をそんなに焦らせたのか。羽生選手なら四回転ルッツやループがなくても勝てるのではないか。周りからは「今できることを極めていこう」「勝つための手段はジャンプだけではない」と羽生選手を説得する声が続出しました。一体ここまで羽生選手を本気にさせた理由はなんなのか。それはオリンピック開催直前までのシーズンベストスコアが物語っています。

 

オリンピック直前までのシーズンベスト

羽生 290.77点

宇野 319.84点

フェルナンデス 295.55点

ボーヤン 300.95点

 

ご覧の通り、総合点において日本の宇野昌磨選手が群を抜いて圧勝しています。その数なんと300点超え。もちろんパーソナルベストといった点では、羽生選手が有利なのですが、オリンピックシーズンに誰が平均的に高得点を積み重ねているのか?という点においては宇野選手が頭一つ抜けている状態だったのです。さらに国内選手権でのスコアではありますが、ネイサン・チェン選手も315.23点という記録を叩き出し、若手の活躍が目立つ流れとなりました。

 

そうなると、怖いのがミスです。難しい構成であればあるほどリスクは上がっていきます。特にジャンプの回数が多いフリーでは、ひとつの四回転の成功とミスで勝ち負けが大きく左右してしまいます。しかし、そんな中でも宇野選手は今シーズン(この時点で)出場した全大会のフリーを平均すると190点台をキープするほど強い選手へと成長していました。一方、羽生選手のフリー平均点は、大会自体の出場数が少ないため、比較に値するかは別として、約175点台という少々厳しい成績となっていました。

 

追われる立場と追う立場。この流れからもう一度「オリンピック金に近い男は誰か」と問われると、「もともとメダルは間違いないと思うが、もしかしたら宇野選手にも金メダルのチャンスがあるのではないか」という空気が生まれてきたように感じます。

 

お互いが必要だった

実際にもし、羽生選手がケガをせず、あのままグランプリファイナルにも全日本選手権にも出場していたらどうだったでしょうか。私が思うに、羽生選手はきっと四回転ルッツを構成に組み込むこと、そして自身が跳べる四回転をすべてプログラムに詰め込むという道を選んだのではないでしょうか。しかし、その方法で若手と競争することを選んでいたら、羽生選手は真・四回転時代の罠にはまり、金メダルはとれなかったと思っています。ただジャンプを跳ぶだけではない選手が、その強みを犠牲にしてまで多種複数回の四回転に挑む必要はまったくなかったのです。あのまま羽生選手が無理に高難度プログラムを強行していたら、オリンピックまでのどこかで、宇野選手にトップの座を譲ってしまうことも考えられたでしょう。仮にそうなっていたら、今回のオリンピックでは、ますます厳しい立場で滑らなければならなかったはず。ある意味、不運に思えたケガによって、羽生選手は、もう一度勝つためには何が必要なのかを見つめなおし、良い方向へと導かれたのではないかと思います。まさにフィギュアスケートの申し子。強運の持ち主です。そして、羽生選手が不在の中、日本男子の立ち位置を守ってくれた宇野選手がいたからこそ、世間や関係者やファンによる過剰なプレッシャーを羽生選手にかけることなく、オリンピックに送り出すことが出来ました。本来、国のエースがオリンピック前に離脱してしまったら、周りはメダルへの不安視から反応も風当たりも、もっと敏感になっていたでしょうし、その責任からケガを無理してでも大会に出場し続け、選手生命さえ侵してしまっていたかもしれません。しかし、日本にはありがたいことに、エースが不在でも世界のトップで戦っていける宇野昌磨という存在がありました。日本には、どちらがオリンピック金メダリストになってもおかしくない存在がふたりいる。そんなふたりが同じ時代に生まれてきてくれたこと自体、本当に奇跡的なことで、日本のファンはとても幸せだなと改めて感じました。

 

また、これから羽生選手を追い越すぞ!とエンジンがかかってきた宇野選手にとって突然の羽生選手の離脱は、どこか心にぽっかり穴が開き、どこか重圧もあるような複雑な心境であったのではないでしょうか。インタビューでも「オリンピックより(羽生不在で優勝必須の)全日本が緊張した」「復帰した羽生選手が盾になって(重圧から)楽をさせてほしい」などトップとして戦う怖さから、とても緊張していた日々を送っていたことがうかがえました。確かに羽生選手がお休みしてからの宇野選手は、しばらく調子を落とした感がありましたが、個人戦で久しぶりに羽生選手と対決した時には、また演技に力強さがよみがえり、戦闘モードの目に戻っていたので、これはやってくれる!と思いましたね。こうしてお互いが知らぬ間にお互いを必要とし、助け合っている関係こそが、今回のワンツーフィニッシュに繋がったのではないかと思います。どちらかひとりが欠けていたら、日本男子の金・銀メダルはなかった。この素晴らしい出会いに乾杯です!

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最終滑走の眩しさ

ピョンチャンオリンピックでも、結局は団体戦に出場した選手は心身ともにペースが乱れ、かわいそうな結果になってしまったな、という印象が強いです。個人戦の何日も前から現地入りし、生活面でも、精神面でも、練習面でも、海外では何かと不自由があったと思います。そんな過酷な状況でも、最後まで自分をコントロールし、最低限のミスで滑り切った宇野選手には今大会一の拍手を送りたいです。本音を言うと、宇野選手にはもう少しゆっくりさせてあげてからオリンピックに挑ませてあげてほしかったのですが、決してベストとは言い切れない中でも、言い訳もせず戦い抜いた姿からは、今シーズンまでに経験してきた辛さや深さ、そして美しさが感じられ、フリーの最終滑走で演じた「トゥーランドット」では、これぞフィギュアスケートだ!という素晴らしい世界観を魅せてくれました。もう私、何回リピートしたかわかりません。それくらいどの選手の演技より短く感じ、心打たれました。オリンピックの最終滑走であそこまで情熱的に舞い、音楽を愛し、魅了させられるスケーターが初出場の選手だったなんて信じられないほどです。おそらく今シーズン一番のトゥーランドットだったのではないでしょうか。正直、あのプログラムのラスボス感は、クリーンでノーミスしたら文句なしで金メダルだったと思います。それくらい良かった。どこか旧採点時代と新採点時代が融合したような不思議な空間・・。素敵な時間をありがとう。

 

内向的になれ

私は芸術性というものは、内なるものから来ていると考えています。内向的になるほど、自分の中から色々な感情が湧き出し、困難であるほど人の気持ちが分かり、繊細になれると思っています。今回、宇野選手のインタビュー記事の中でとっても興味深い発言があったので、ここに書き留めておきたいと思います。

 

宇野昌磨選手が英字メディアから「ネイサンのフリーに驚いたか」と聞かれ、「いいえ、ネイサンの練習を見ていたらフリーの演技に驚くのではなく、ショートプログラムの演技に驚きます。それくらい練習ではいつも成功しています」と答えました。演技中はちょうど仮眠していたということで、「結果を知ったときは僕はハッピーな気持ちになりました」

  

矢内由美子さんのページ - Yahoo!ニュース

 

このコメントを見て温かい気持ちになったのは私だけでしょうか。団体戦個人戦のショートで酷いミスをし、アメリカ国中から叩かれたネイサンを思うと、泣けてきちゃって・・。「フリーが特別なんじゃなく、ミスしちゃったショートの方が珍しんだよ!フリーの演技は頑張り屋のネイサンなら当然!」と、言ってくれてるんですよね。私はこの言葉を聞いて、選手同士が互いをリスペクトし合って戦っているんだな、ということ、そして宇野昌磨は人を真っ直ぐに見ている優しい人間なんだな、と宇野選手の演技がなぜ若くしてあんなにもアーティスティックなのか分かったような気がします。

 

宇野選手は年のわりには落ち着いていて、シャイな子かもしれませんが、勝ちたいという闘志は誰にも負けないくらい持っている選手です。それと同時にとても人間的に可愛らしく、誠実で、謙虚で、これからたくさんのファンを増やしていくことでしょう。私はそんな宇野昌磨を日本の二番手だなどと思っていませんし、羽生選手が1位で宇野選手が2位が理想だとも思いません。どちらのスケーターも大好きなので、その時強い方が勝ち、切磋琢磨していってほしいなと願っています。だからこそ言いたい!宇野選手が「オリンピックだからといって特別な気持ちはない」「どのメダルも一緒」といったのは決してビッグマウスなんかではなく、宇野選手は金メダルを目指していたんだよということを!宇野選手は銀メダルで満足なんてしていないし、ずっと羽生選手の下でいいなんて思っていません。おそらくですが世界選手権でも、全日本選手権でも羽生選手を破ってでの金メダルに意味を持っているのだと思います。少し報道が宇野選手に対し「君はそれで(羽生の下で銀)満足だよね!嬉しいよね!」と言っているようで気の毒で・・。(まぁ、本人も今回の結果については「あまり悔しいとは思っていなくて実力の差」と口では言ってはいますがね)スポーツ経験者なら誰でも感じたことがあるように、負ければ悔しさや一瞬の嫉妬だってあると思うのです。しかし、そこにリスペクトがある限り、気持ちを前向きにし、再び背中を追いかけていこうとするのがアスリート。スポーツなんだから、報道が決めた格付けを強制する必要はないのになぁ、もっと配慮はできないものかなと少々疑問に思った次第でありました。日本人はスポ根漫画の影響で美しい友情(キラキラ~ン)を求めすぎる傾向にありますが、基本的にすべての選手が一番を目指しているということを前提に、挑む姿を理解してあげてほしいと思いました。

 

男子の感想

ここまで長くなりましたが、最後に男子シングルの感想を選手別に一言ずつ書いて終わりにします!色んなドラマがあってまだまだ興奮が抑えきれません~!

 

羽生

ショートでの完全復活に王者の意地を感じました。ジャンプは100パーセントではありませんでしたが、ミスがあって悔しかったソチのフリーを超すことはできたんじゃないかな?と思います。羽生結弦、君は歴代最高級のスーパースターだ!二連覇を確実にしたのは、メンタルの強さといって間違いはない!!おめでとう!!日本の誇りです。

 

宇野

今、宇野選手が持っている芸術性の高いスケートはあなたにしか出せない個性です。つまり魅力度ナンバーワンということです。シーズン後半疲労感で崩れてしまうんじゃないかと心配でしたが、今までの努力が銀メダルをプレゼントしてくれました。おめでとう。

 

フェルナンデス

全選手の中でもジャンプはすこぶる良好に見え、フリーの途中まで金か銀だと思いました。ソチではメダリストになってもおかしくなかった実力者だけに、ピョンチャンでは絶対にメダルをとらなければ、もったいない選手になるところでしたが、無事に目標を達成できて安心しました。おめでとう!

 

ボーヤン

両足のケガから四大陸での急激な成長に、オリンピックでは確実にメダル争いに食い込んでくると思っていました。以前はジャンプだけの選手と批判されることもありましたが、今は少しずつ改善をはかってきているようで、あともう少しだったという印象です。キスアンドクライでネイサンのスコアを超え、メダルの可能性を残したことが分かった瞬間の涙には、私も堪えきれませんでした。ほしかったよね、メダル。そうだよね。これから高難度ジャンパーには風当たりが強くなる時代が来るけれど、北京では総合力のボーヤンとして笑顔で終えれることを願っています。きっとやるんだぞ!ボーヤン。

 

ネイサン

オリンピック前に急に周りが騒ぎ出したことにより、プレッシャーが半端じゃなかったのかなと思います。それでもフリーは今シーズンベストの演技でした。それは確実です。6回も四回転を跳んだのに、そこにはジャンプだけじゃなく、ストーリーがありました。上手く言えませんが、ネイサンがネイサンではないみたいな、表現者としての人生がそこにありました。ネイサン、大丈夫だ。もう次は怖くない。ネイサンは強い。北京で必ずやってくれ!

 

コリヤダ

なんてことだ。ショックすぎて言葉になりません。ロシアはこの結果を責めるかもしれませんが、コリヤダが才能あるスケーターだということにはかわりありません。どうかコリヤダを圧力なしに大会に送ってあげてほしい。自国が自国のスケーターを潰さないであげて。早くから新潟で練習し、韓国に移動して団体戦フル起用・・間髪入れずに個人戦。疲れたよね。身心休めて復活してほしいです。

 

パトリック

個人戦は上手くはいかなかったし、本人もそこは残念だったと思いますが、ハレルヤにはしんみりきちゃいました。ズルイですね、あれは。相変わらずひとり別次元のスケーティング技術ですし。一番嬉しいのは、パトリック・チャンがここまで、この日までリンクに立ち続けてくれたこと。ファンにとっては結果より、それが何よりも幸せなことなんですよね。続けている本人には辛いことが多かったかもしれませんが、逆にパトリックの演技に癒された人はたくさんいます。フィギュアスケーターになってくれてありがとう。

 

リッポン

良い演技が出来て良かった。今シーズンは何かがとりついたかのようなリッポン。フリーは観客もリッポンのスケートへの情熱を感じ取ってくれていましたね。もう選手が満足して終えれるならなんでもいい、今まで頑張ってきた分の演技をしてくれたらそれでいいと思いました。最後まで綺麗だったよ、リッポン!

 

ビチェンコ

緊張を感じさせないリラックスした演技はさすがでした。もうこの場で滑れることが幸せなんだという気持ちで溢れていましたね。もう勝ち負けではなく、人生を滑ったんでしょうね。ありがとう。

 

ジュンファン

自国開催の大歓声ムードにも緊張を力にかえて、とても頑張ったと思います。偉い!今やれることは出し切ったんじゃないかな?それが一番大切ですよね。一生に一度あるかわからない自国開催のオリンピックに出れたことは宝になることでしょう。

 

刑事

ジャンプの感覚が崩れてから苦労していましたね。それでも、田中刑事というスケーターが日本にいてくれなければ団体戦はもっと大変なことになっていました。まだまだ上を目指していくという言葉は嬉しかったし、伸びしろ満点で頑張れ!

 

・・全員の感想ではありませんが、どこかで追記できたら書き足そうと思います。書かないかもしれませんが

 

以上が、ピョンチャンオリンピック男子シングルの感想でした。

 

選手の皆さん本当にお疲れさまでした!!

 

おわり